国鉄闘争の主体的総括もせず、企業内労働運動へ逃避か
国労第80回全国大会報告
国労の今後と国鉄闘争の総括が問われ、ターニングポイントになるといわれた国労の第80回全国大会が、7月28・29日静岡県伊東市で開かれた。
私たち組合員にとって、6月末の「雇用の断念」「闘争の終結」「4者4団体の解散」は、マスコミ報道が先行し、寝耳に水状態であった。代議員からは、「政府の雇用要請に対するJRのゼロ回答は、政治解決以降の1年間、本部が4者4団体まかせにして国労として闘いを提起せず、JR会社への運動をしてこなかったことも一因である」、「本部として抗議声明もださなかった」などが指摘された。
「国鉄闘争の総括」では、多くの代議員が「4者4団体の時系列の結果報告」でなく、国労としての総括を求めた。浜中書記長は、方針案提起でも「闘いの総括」の項にはふれず、中間答弁、集約においても、「24年間の、ある位置だけではない、すべての経験・総合力が今回の到達点になった」とした。
98年の、国鉄改革法を認め、雇用安定に関する協定の締結、不当労働行為の訴訟を取り下げ労使共同宣言を締結するという「補強5項目」や、「JRに法的責任なし」の受け入れを条件にした「四党(自民、公明、保守、社民)合意」による混乱。そこから、組合差別による不当解雇の無効を争った「鉄建公団訴訟」に立ち上がった闘争団員への統制処分についても総括をしないままで、闘争団員の名誉回復も置き去りにした。
最終局面において「当事者の意向を尊重する」のはもっともではあるが、4者4団体まかせで「終結」をはかり、闘争団員を国労から切り離してしまった。
そのことが最もよく表れていたのが規約改正についての提案だ。「組合員の範囲」の改正で、「不当処分で解雇された者が本人希望で組合員資格を継続できる」という修正動議もあっさり否決。「国鉄分割民営化反対闘争」を本部指導のもとで忠実に実践し、国労運動の先頭に立ち引っぱってきた闘争団組合員を、国労から追い出してしまった。国労が地域運動をしていく上で、オルガナイザーとして期待される組合員をだ。
さらに修正動議の「全労協・地評等・地区労等に加盟し、共闘運動を発展させること」も否決し、組合員を「JRグループに雇用された労働者」とし、より一層企業内組合に埋没する方向にむかっている。
私たちは24年間、全国の支援や共闘の仲間の支えがあって闘ってこれた。「格差社会」といわれ、非正規労働者、無権利状態の労働者があふれる今日こそ、地域共闘の助け合いが必要だ。国労がその一端を担うのは当然であり、全国で地区労運動をすすめている組合員は、日々奮闘している。大会冒頭の委員長挨拶での、討議を経ない「連合加盟」発言は、その運動に水をさすものであり、不適切である。
JR各社が国鉄職員採用にあたり、JRの設立委員が国鉄に労働条件や採用基準を提示し募集、国鉄が採用候補者名簿を設立委員に提出、JRは名簿から採用、などを定めた「改革法23条」によって、不当労働行為の責任は誰も取らずに、国鉄闘争の終結となったが、実行行為者は、JR幹部となって存在する。
今後の闘いとして、JRの逃げ得を許さず、あらゆる場面で追及していかなければならない。そのためにも、地域共闘は大切であり、JR利用者・地域住民との連帯が必要である。職場・地域にかえり奮闘する決意をし、大会報告としたい。
櫻井 功(国労高崎地方本部)
疑わしきは救済を! 薬害C型肝炎訴訟
薬害に対する新たな闘いが始まった。それは以前、本誌(806・7合併号)で紹介された「カルテがないC型肝炎訴訟原告団」の闘いだ。2010年11月、104名の原告が東京地裁に第1陣として提訴。そして11年5月には東京地裁に第2陣として52名、大阪地裁に30名、鹿児島地裁に20名、計102名が提訴した。合わせて現在206名の提訴者数である。最低でも1万人以上といわれる薬害C型肝炎患者の9割以上が、カルテがないために薬害であるとの証明が困難な状態だ。それは血液製剤(非加熱)が使用されていた1964年〜94年当時、出産や手術等で入院した病院が廃院していたり、医師が存命でなかったりするため。
患者たちの闘いは2008年1月に施行された特別措置法(薬害肝炎救済法)を勝ち取った。この救済法では「人道的観点からの一律救済」を謳い、「カルテのみを根拠とせず」という衆議院付帯決議も付けられ、患者達はこの法律で救済されると思っていた。ところがこの法律は行政救済ではなく、司法判断であることから薬害であることを裁判所に申立なければ救済の判断は得られず、且つ、投与事実を患者が立証しなければならない。「カルテがない」ことで立証のハードルは非常に高いというのが実状だ。このままでは泣き寝入りしなくてはならないという状況に追い込まれていた。
当時、新潟で活動していた佐藤静子さん(原告団事務局長)が知人の伝手で2010年春、交通ユニオンを紹介されそこからスタートとなって原告、応援団、弁護団が結成された。以降、佐藤事務局長は、北は北海道、南は鹿児島まで全国を飛びまわり、原告団と弁護団の立ち上げに向けて奮闘中だ。佐藤事務局長への患者からの問い合わせは、年間3千件を優に超える。
薬害C型肝炎は、世間では救済法で終わったものと理解されているが、救済されたのはわずか1千700人弱で、明確に立証できた患者だけの救済に過ぎない。闘いは終わっていない、裁判は始まったばかりだ。
これから裁判と並行して厚生労働省や製薬会社に対する行動も開始していく。9月14日の東京総行動には参加予定だ。原告は高齢で、健康ではない。しかし原告となった患者は泣き寝入りしないという顔つきに変わっている。すでに他界した原告もいて、2013年1月までの時限立法である肝炎救済法の期限延長を求め、できる限り多くの患者が原告になり救済されるためにサポートしたい。
関口広行(C型肝炎患者をサポートする会)
812 813 814+5 816 817 818 819 820