たたかいの現場から

948号

◎自衛官の命、政治利用するな  「駆けつけ警護」閣議決定に怒り

 南スーダンPKOに派遣されている部隊に「駆けつけ警護」の任務付与を閣議決定するとした11月15日朝7時半過ぎ、総がかり行動実行委員会の緊急の呼びかけにもかかわらず、官邸前には350人が集まり「南スーダン派兵反対」「駆けつけ警護絶対反対」等の抗議の声をあげた。

 出勤途中の人のなかには、立ち止まって訴えに耳を傾ける姿もあった。

 

 集会には民進党、共産党、社民党からも国会議員が参加し、内戦状態にある南スーダンで自衛隊が武器を持って参加することの違法性等について、同時にもし戦死者が出るような事になれば戦後の意味が変わってしまう、何としても駆けつけ警護を止めさせなければならないと訴えた。
 参加者からは、「もし戦死者が出るようなことになれば安倍政権はその事を政治利用して、だから改憲が必要だという空気を創り出そうとするだろう。自衛隊員の命を政治利用させてはならない」「戦後日本は武器に頼ることなく一人の戦死者も出さず、一人も殺さなかった。内戦状態の中で戦闘に巻き込まれ、誰かを殺すようなことになれば日本全体が恨みを買い攻撃の対象とされる」「PKO派遣の前提はもう崩れている。閣議決定してまで新任務を付与するのはどう見てもおかしい」との訴えも。

 

 総がかり行動実行委の福山真劫共同代表は「次の衆議院選挙では野党共闘を一層推し進め野党と市民が連携して安倍政権を追いつめよう、勝つまで闘い続ける」と表明。

 抗議行動の最後には高田健さんから行動提起があり、2千万人署名をさらに集めること(現在1580万人分集まった)、11月19日の国会前行動に大結集することなどが呼びかけられた。参加者の一人として、労働組合の旗が少ないのが残念であった。

 

瀧 秀樹(全石油昭和シェル労組)

 

◎「偽装委託」で社保負担逃れ?  講師らNOVAを集団提訴

 2007年に経営破綻した英会話スクールのNOVAは、「雇用を引き継ぐ」などの条件で、管財人とゼネラルユニオン(GU)、さらに被害生徒会の承認を得て、新NOVAとして継続してきた。ところが最近、「雇用を委託契約に切り替える」とし、講師を独立自営業者(一人親方)とする契約を強制してきた。GUはNOVA本社に再三警告したが応じないため、全国各地の組合員が、名古屋地裁への集団提訴に至った。

 

 NOVAは授業毎に100円(月1万5千円)の施設利用料を講師に払わせ、その支払いを講師が独立自営業者であることの根拠の一つにしていたが、施設利用料は「実費名目」で還付していた。真実の委託なら委託を受けた講師に広い権限があるはずなのに、NOVA本社から講師への管理と指示が発覚する。「教科書と教材は会社指定」「本社直轄研修」「ドレスコード」「他社での競業禁止」「住宅手当」などで、業務内容も雇用の講師と同一だった。

 

 法改正で本年10月から社保加入の要件が「週20時間以上」とされたが、NOVAは、これら強制保険の会社負担を免れる意図で委託導入を思いついたようだ。

 訴状では、雇用扱いされなかったことによる損害の賠償も請求に含まれている。派遣法を脱法する偽装請負は大きな社会問題になったが、個人委託への偽装はそれとは異なる手口で、労基署や法人間委託を所轄する労働局による摘発も不十分である。

 今回の集団提訴は、労働行政や、派遣業各社(GABAなど)への警告の意味も込められている。

 

山原 克二(ゼネラルユニオン)

 

◎ハロワ職員雇い止めで支援集会  「法の谷間の無権利」鋭く問う

 「リーマン・ショックの時のことを覚えていますか?」ハロワ立川裁判を支援する会はハローワーク(府中・八王子・立川)前での情宣からスタートした。

 リーマン・ショック当時のハロワには解雇された労働者が長蛇の列をなし、非正規は雇用調整のための失業予備軍でしかなかったことが示された。これがこの運動の出発点である。

 

 ハロワ相談員も非正規であり、いつ解雇されるかわからない。「ほかにいい人がいた」の一言で雇い止めされた「ハロワ裁判」への関心は高く、小雨の中、ビラを取りに来る職員もいた。

 

 11月11日、立川市内で開かれた裁判支援集会には、自らの非正規問題に取り組む公共・民間の労組・労働者をはじめ、沖縄や日の丸・君が代、反原発、貧困問題や人権問題などに取り組む多くの方々が参加、熱い討論の場となった。

 裁判で意見書を書いた中央大学法学部名誉教授の近藤昭雄先生も駆けつけ、公法上の任用論の問題点を鋭く解説。雇い止めの不安を訴えるハロワ相談員のメールが紹介され、ある市職員からは次は確実に雇い止めとなる不条理に怒りがぶつけられた。小島啓達弁護士からは裁判に関する報告があった。

 

 被告(国)は「公法上の『任用』は私法上の『契約』ではない。だから被告との間に労働契約はない」と詭弁を弄する。

 なぜ非正規公務労働者は法(労働契約法)と法(国家公務員法)の谷間に、無権利状態で突き落とされたままなのか。最高裁が認めた「雇い止め法理」が非正規公務労働者には認められないのか。この裁判は非正規公務労働者の「労働者性」をめぐる争いである。

 次回は11月30日10時から東京地裁606法廷で結審の予定。支援、傍聴をお願いします。

 

行光 誠治(ハロワ立川雇い止め裁判原告)


◎日日刻刻  (10.28〜11.15

10月28日(金)

■内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」の結果によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、「賛成」とする者の割合が40.6%(「賛成」8.8%+「どちらかといえば賛成」31.7%)、「反対」とする者の割合が54.3%(「どちらかといえば反対」34.8%+「反対」19.5%)。

 

31日(月)

■連合の2017春季生活闘争中央討論集会で、神津里季生会長は、闘争のポイントは、「働く者、国民が将来への希望と確信を持てるよう、われわれ労働組合こそが、賃金・労働条件の『底上げ・底支え』『格差是正』を通じて、構造的問題の解決をはかるけん引役を果たすのだという覚悟を持って、闘争に臨んで欲しい」とあいさつ。

 

11月9日(水)

■厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」は、過労のためうつ病を発症し、自殺した電通の元社員、高橋まつりさんの母・高橋幸美さんが「国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本に変えてくれることを強く望みます」とのべるなど、実効性ある労働時間規制を求めるものとなった。

■東京商工リサーチの「2016年1〜10月『労働者派遣業』の倒産状況」によると、倒産件数は54件(前年同期比4件増)。原因別では、「販売不振」35件、「他社倒産の余波」8件、「事業上の失敗」6件など。

 

11日(金)

■労働政策研究・研修機構(JILPT)の「5年前と現在の仕事と生活に関するアンケート」調査結果によると、現在も非正規雇用を継続している者のうち、正社員転換希望者は男性と無配偶女性の5割、有配偶女性の3割程度。

 

14日(月)

■厚生労働省・全国労働局長会議で、岡崎淳一・厚生労働審議官が電通過労自殺問題に触れ「我々が反省すべき課題だ。全体の状況を把握して指導していくことが求められる」と述べた。

■政府税制調査会の所得税改革についての中間報告は、企業の労使に配偶者手当の見直しを強く求めた。

 

15日(火)

■民進党、共産党、自由党、社民党の野党4党は、残業時間の法規制などを盛り込んだ労働基準法改正案(長時間労働規制法案)を衆院に共同で再提出。

 

 

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