たたかいの現場から
843号

6.29首相官邸を揺るがした「大飯原発再稼働反対」の声と音

 2012年6月29日夕刻の首相官邸前は、日本の民衆史に大きな一頁を刻んだ。大飯原発再稼働反対・脱原発の「怒りの声」は、歩道からあふれ、車道に拡がり、60年安保闘争以来の「国会前解放区」が出現した。
 3月末から、複数の市民グループ有志でつくる「首都圏反原発連合」が毎週ツイッターで呼びかけた抗議行動は、いつしか小さな花のつぼみが集まって大きな花となる紫陽花()あじさい)のように、一人ひとりの力は小さいけれど市民が集まって大きな声を出せば日本を変えられると「紫陽花革命」と名付けられた。
 老若男女の人の波、地中からわき上がるような「再稼働反対」の声、凄まじいまでのエネルギーが官邸にぶつけられた。もはや警官隊も制止できず、総数は10万人、20万人ともされる、数えきれないほどの人の波はどんどん膨れあがっていった。
 初めてこのような行動に参加したという多くの人々が、手作りのアピールグッズをもち、怒りを込めてここまで集まってきたのだ。そして、これまで意図的に抗議行動を無視し続けていたマスコミ各社のヘリコプターも、多数上空を旋回していた。
 しかしその「怒りの声」を聞いた野田首相は、「大きな音(おと)だね」とSPに一言もらしただけだという。まるで「パンが無いならお菓子を食べればいいのに」と、食料不足にあえぐパリの民衆を見て、王妃マリー・アントワネットが言い放ったセリフのように。
 国民の三分の二が再稼働に反対しているにもかかわらず、民衆の怒りも、生活も、声も、無視する野田政権は、今や「自民党野田派」になりつつある。
 まだ首相官邸前抗議行動は続くし、全国に燎原の火のごとく拡がっている。
 そして7月16日の「さよなら原発代々木大集会」には、さらに多くの人々が参加するだろう。

水谷研次(編集部)

橋下市長に、異議あり!! 6・25集会
 ナショナルセンターを超えた一大結集

 6月25日、大阪・中之島中央公会堂で「橋下市長に、異議あり!! 6・25集会」が開かれました。主催は大阪労働者弁護団・民法協など法律家8団体で、連合系、全労連系、全労協系の労働組合や市民1千200名以上が参加しました。
 橋下府知事時代に補助金を全額カットされた日本センチュリー交響楽団(旧大阪交響楽団)の「負けないで」の演奏で集会は始まりました。橋下市長は、文楽や大阪フィルハーモニー交響楽団をはじめとした文化事業への補助金カットを提案しているのです。
 次に、宮里邦雄さん(日本労働弁護団会長)が講演を行いました。暴走する橋下市政が歴史に残る不当労働行為を繰り返し、職員には支配服従関係をつくり、大阪を「基本的人権を蹂躙する憲法特区」にしようとしていると批判しました。
 続いて各組合のアピールが行われました。大阪市労連(自治労)、大阪市労組(自治労連)、大阪市教組(日教組)、JAM(連合)、建交労(全労連)に続いて全労協として発言に立った井澤絵梨子さん(教育合同執行委員)は、大阪市からの免職処分を跳ね返して原職復帰した経験を踏まえ、組合の団結と地域の連帯をつくれば橋下独裁には必ず勝てると訴えました。
 集会では、大阪市の7月議会予算案での補助金や施設廃止提案に反対している市民団体から発言、また平松前市長の飛び入り発言が行われました。
 6・25集会は、ナショナルセンターの枠を超えた労組の結集を実現し、橋下市長の労組敵視・労組つぶし政策と全面対決する「大同団結」の一歩を築きました。橋下・維新の会が国政進出を公言している時、ハシズムと闘う労働組合の全国的結集が問われています。

山下恒生(大阪全労協副議長)

【資料】
社会保障制度改革推進法案に反対する日弁連会長声明(2012/6/25)
 民主党、自由民主党及び公明党が今国会で成立を図ることにつき合意した社会保障制度改革推進法案(以下「推進法案」という。)は、「安定した財源の確保」「受益と負担の均衡」「持続可能な社会保障制度」(1条)の名の下に、国の責任を、「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた個人の自立の支援に矮小化するものであり(2条1号)、国による生存権保障及び社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、日本国憲法25条1項及び2項に抵触するおそれがある。
 すなわち、推進法案(2条3号)は、「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料負担に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」として、年金・医療・介護の主たる財源を国民が負担する社会保険料に求め、国と地方の負担については補助的・限定的なものと位置付けており、大幅に公費負担の割合を低下させることが懸念される。
 また、推進法案(2条4号)は、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとするとしているが、財源の確保は、憲法13条、14条、25条、29条などから導かれる応能負担原則の下、所得再分配や資産課税の強化等の担税力のあるところからなされなければならない。
 さらに、推進法案(4条)は、新設する社会保障制度改革国民会議の審議を経て社会保障制度改革を具体化する立法措置を講じるものとしているが、社会保障制度改革をめぐる国民的議論は、全国民の代表である国会において、全ての政党・会派が参加し、審議の全過程を国民に公開すべきであり、内閣総理大臣が任命する僅か20名の委員による審議に委ねることは民主主義の観点から不適切である。
 最後に、推進法案(附則2条)は、「生活保護制度の見直し」として、不正受給者への厳格な対処、給付水準の適正化など、必要な見直しを実施するとしている。しかし、生活保護受給者の増加は不正受給者の増加によるものではなく、無年金・低年金の高齢者の増加と非正規雇用への置き換えにより不安定就労や低賃金労働が増大したことが主たる要因である。むしろ、本来生活保護が必要な方の2割程度しか生活保護が行き届いていないことこそ問題である。給付水準の見直しについては、最も低い所得階層の消費支出との比較により、保護基準を引き下げることになりかねず、個人の尊厳の観点からも是認できない。
 当連合会は、2011年の第54回人権擁護大会において、「希望社会の実現のため、社会保障のグランドデザイン策定を求める決議」を決議した。しかし、推進法案は、上記のとおり、社会保障制度の根本的改悪、削減を目指すものとなっており、当連合会の決議に真っ向から反する法案である。
 よって、当連合会は、今国会で推進法案を成立させることに強く反対するものである。

労働時間が理由の社会保険加入拒否は違法と
 非正規講師が厚労省を提訴

 ゼネラルユニオンは結成以来、非正規労働者の健保・年金加入の権利を要求し、対行政交渉や、加入確認請求を続け、多くの企業での加入拡大を実現してきた。今回、消費増税法案等と一体で今国会に提出されていた「国民年金法等の一部を改正する法律案」が6月26日に衆議院で可決され、参議院に送られた。この法案では、加入要件を週20時間以上、企業規模501人以上に加え、月収条件も増額されており、これでは公的な強制加入保険とはいえない。
 さらに問題なのは、厚生年金法や健保法では、労働時間等での制限がなく、誰でも加入できる筈なのに、「週30時間が加入要件」とした法的根拠のない慣行が横行していることである。これは1980年当時の、旧社保庁の「内かん」(通達以下)が、「同種労働時間のおおむね4分の3以上」を加入促進キャンペーンの目安としたことから、間違いが拡大してきた。悪質企業は、週29・5時間で雇い、年金事務所の窓口や審査会においてですら、内かんを根拠にした加入拒否が後を絶たず、混乱が拡大している。
 ゼネラルユニオンでは、社会保険加入を拒否されたことに対し、東海市教委から偽装委託されたインタラック社のALT講師を原告とする行政訴訟を決意。厚労省・年金機構・審査会を被告とする訴訟を、4月より東京地裁で開始した。行政側は、行政裁量権を、労組側は違憲を主張するなど、大きな裁判となっている。本裁判を通じて、官民ぐるみの脱法工作と、非正規差別を明らかにし、さらに、今国会にみられる「非正規当事者不在」の加入要件緩和法案の攻防にも警鐘を鳴らしたいと思う。

山原克二(ゼネラルユニオン委員長)

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