たたかいの現場から

967号

格差是正> 労契法20条郵政裁判 大阪地裁でも勝訴

 日本郵便で働く期間雇用社員8人が格差是正を求めていた労働契約法20条郵政西日本裁判で、2月21日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)は、郵政のみならず、日本の非正規雇用労働者の未来に希望を灯す画期的判決を言い渡した。


 同日午後1時30分、判決をうけて、原告・梶さんと高木弁護士が法廷から飛び出し、「勝
利判決!」「格差是正判決!」の旗を大阪地裁前で高々に掲げた。集まった200人以上の郵政産業労働者ユニオン(郵政ユニオン)組合員、支援者から大きな歓声が起こる。勝利判決をかちとったぞ!日本郵便は均等待遇を実現しろ!シュプレヒコールの中、歓喜の輪が広がった。


 内藤裁判長は判決で、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当の労働条件の相違を「不合理」と認め、会社に対して合計304万5400円の損害賠償を命じた。東京地裁判決では減額されていた年末年始勤務手当、住居手当も100%認め、さらに扶養手当を100%認めたことは大きな意義がある。一方、休暇に関しては具体的な判断は示されなかった。

 郵政ユニオンは、2014年5月東京地裁に、6月大阪地裁に、労契法20訴訟をそれぞれ提訴した。東京地裁では3人、大阪地裁では、8人、合計11人の非正規雇用で働く組合員が、勇気をもって原告となった。
 郵政ユニオン総体で原告を支える体制をつくり、裁判闘争を進めてきた。原告は全国を飛び回り、裁判闘争への支援拡大と全国でとりくまれている20条裁判との連帯を進めてきた。


 昨年9月14日には、東京地裁で東日本裁判の判決が出された。地位確認は認められなかったものの、損害賠償として年末年始勤務手当8割、住居手当6割がみとめられ、夏期冬期休暇、有給の病気休暇がないことは不合理と判断が下された。
 郵政ユニオンは、認められなかった部分の勝利をめざし、控訴するとともに、一審判決で示された、2つの手当、2つの休暇に絞ってすぐに実現するよう、会社交渉をもとめた。18春闘においても、賃上げとともに均等待遇要求を要求の柱に据えその実現をめざしている。

 

家門 和宏(郵政産業労働者ユニオン副委員長)

 

フジビ争議> スラップに屈せず中労委で和解

 昨年末から争議行為を中断して和解協議を行っていた「フジビ闘争」は、2月14日に労使双方が中労委の和解勧告に合意し、2月20日、中労委で調印が行われた。ここでは、和解にいたる経過等を報告したい。


 昨年8月22日、富士美術印刷(フジビ)が提訴したスラップ訴訟の最高裁上告棄却決定後、9月14日のフジ製版破産・解雇5周年の地域デモには争議開始から最大の約250名余が結集し、10月には連続座り込み行動を、雨にも負けず300名を超える仲間たちと貫徹した。
 これら現場闘争を背景に調査が進行していた中労委で、昨年11月28日、フジビから和解の席に着くから争議行動を止めて欲しいとの話がきっかけとなった。
 和解協議は昨年12月15日に始まり2ヵ月に及ぶ攻防の中で、私たちは苦渋の決断を行った。1月末に、会社に先んじて中労委の和解案(労働委員会規則第45条の8にもとづく勧告)を受け入れたのだ。
 和解勧告は公表できないが、親会社フジビへの雇用要求は成らずともスラップ訴訟を含めフジビに責任を認めさせた内容になっている。


 フジビは1月31日の調査日に、和解勧告の受け入れを拒否した。当然にも決裂と思ったが、事態は思いがけない方向に動き、翌2月1日、中労委の三者委員がフジビに出向き社長を説得するという。異例のことだった。その後も中労委の説得は続き、私たちは2月16日に東京総行動の社前集会を構えて和解協議の期限を2月15日と指定。前日の14日、フジビが勧告を受け入れたと報告が入った。年間80回余の社前行動がフジビを解決に追い込んだと言っても過言ではないと思う。


 私たちと雇用契約があったフジ製版は破産で消滅し、親会社で元請のフジビに対し労組法7条の使用者として「雇用主以外の事業主」でも労働条件を具体的に支配、決定する地位にあったとして使用者性の拡大を求めるたたかいに挑んだ意義は大きいと思っている。

 

中原 純子(全労協全国一般東京労組フジビグループ分会)

 

理研雇い止め> 無期転換逃れと批判 都労委調整始まる

 国立研究開発法人理化学研究所(埼玉県和光市)での有期雇用職員雇い止め問題は、膠着状態のまま契約期限の3月末を迎えようとしている。理研労組は昨年12月、東京都労働委員会に不当労働行為(不誠実団交)の救済申し立てを行い、2月から調査が始まった。


 今回、対象となっているのは「アシスタント」「事務」の両職種。2月の参議院予算委員会
によると、無期転換試験(後述)合格者と年齢などにより嘱託職員になる予定者をのぞき、345人が雇い止めとなる。
 理研の就業規則では当初、雇用契約期間は1年以内としか定められておらず、複数回更新し、5年以上在籍している有期職員は多数いた。だが、理研は16年に就業規則を変更し、有期契約職員は通算契約期間を5年上限とすることを定めた。この規定は13年4月1日までさかのぼって適用するとしており、今年4月に無期転換権を得るはずだった職員が雇い止めにあうこととなった。

 

理研は無期雇用職種を設け、試験に合格したアシスタント、事務は無期雇用とした。だが、試験に合格したのは受験者の3割程度にとどまった。試験内容も、勤務状況を査定するものではなく、小論文や面接といったあいまいな基準だ。

 雇い止めとなる研究アシスタントの40代女性は、研究を支えている自負をもって働いてき
た。「今回の雇い止めは、ロボットか物のような扱い。誰でもいいということが頭にあるから
できること」と憤る。2回無期転換試験も受けたが、不合格だった。

 2月14日には理研や大学、研究機関での雇い止め問題について参議院議員会館で院内集会が開かれた。雇い止めとなる研究アシスタントの女性は「(国会や集会で)こんなにも関心を持たれ、4月以降も働き続けることができるかもしれない、という希望をもっている。もしかしたら、もしかしたら、と思っている」と涙ぐみながら語った。

 理研労組は、会社との団交、記者会見などを通じて問題を訴えてきたが、理研側は雇い止めを撤回する姿勢をみせていない。

 理研では8割以上の職員が非正規雇用で、今回対象となった職種以外の技術系職員についても、5年後の雇い止めが懸念されている。こうした事情も踏まえ、理研労組の金井保之執行委員長は早期解決を第一にしながらも、「提訴も視野に入れている」としており、弁護士相談会も開催している。

 

西田 真季子(毎日新聞記者)

 

メルスモン> 勤続14年の後雇い止め 無期転換求め労働審判

 医薬品を製造・販売するメルスモン製薬(東京都豊島区)に14年勤続し、19回(賃金改定時を含めると20回)の更新を重ねてきた実績を有するにもかかわらず、昨年9月15日、雇止め・解雇された全国一般東京東部労組労働相談支部組合員の島津葉子さんが、1月29日、労働契約法第18条「5年無期転ルール」無視も決め込む会社を法的に追及するため、東京地方裁判所に労働審判を申し立てた。


 会社は、「パートには研修を受けさせない」「もっと若いヒトを採りたい」といった非正規労働者差別や年齢差別を臆面もなく繰り広げ、労働審判にメインステージを移すことを理由と
して団体交渉の申し入れすら拒否。組合に対する不当労働行為をますます強めてくるなか、東部労組と島津さんは初回審理期日3月14日を迎える。
 当日は、労働審判に臨む島津さんを激励し送り出すとともに、改めて相まみえる会社とそ
の代理人弁護士に早期解決を促し、「5年無期転換権」の完全履行を求め社会的にもアピールする裁判所前集会を予定だ。

 

矢部 明浩(東京東部労組書記次長)

 

都立病院> 独立行政法人化反対 都民・職員らが集会

 1月17日、東京都の諮問委員会である都立病院経営委員会が、今後の都立病院の運営は地方独立行政法人がふさわしいと勧告してからーヵ月の2月15日。都議会内会議室で第1回「都立病院の地方独立行政法人化を都議と考える学習講演会」が、都立病院の充実求める連絡会の主催で行われた。
 1月17日の勧告を受けて急遽準備された集会だったが、93人が参加した。集会では独法化問題に詳しい尾林芳匡弁護士が講演。

 

 尾林さんは、医療の在り方を定めた医療法のおおもとにあるのは生存権を定めた憲法25条であり、「医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効果的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康保持に寄与する」(医療法1条)という原点をまず確認した。
 その上で地方独立行政法人などの民営化手法の問題点を指摘。先行して独法化された大阪府立病院や国立病院での事例を具体的にあげなら、独法化の口実である「病院の実情に合った適切かつ迅速な人材の確保」によるサービスの向上がまやかしでしかないことを明らかにした。
 講演後には、「Changeもっとよりそう都立病院へ、みんなの力でSTOP!独法化のための行動提起」が行われ、3万筆を目標とした署名運動やSNSを利用した情報拡散、第2回の学習会への参加、独法化反対の声を「都民の声総合窓口」に集中させる行動などが呼びかけられた。

 都立病院独法化についてマスコミは「都立病院は赤字体質」などと報道したが、都立病院会計が赤字になったのは16年のみであり、都立病院は良好な経営状態にある。独法化する理由はない。都立病院を独法化する理由を「経済性を発揮」など並べ立てているが、尾林弁護士の講演に明らかなように、医療がまずめざすべきは生存権の保障であり「医療を受ける者の利益の保護」である。
 独法化を阻止するだけでなく、保険証をなくした住民を保護するような、都民に寄り添う都立病院へと変えていかなくてはならない。

 低所得者の死亡率は高所得者より3倍高い。病気は自己責任ではない。

大利 英昭(都庁職病院支部書記長)

 

米韓軍事演習> 平昌五輪を機に停止を 米国大使館へ要請行動

 平和フォーラムやピースボートなど多くの市民団体で構成する「東アジア市民連帯」は2月
7日、「平昌(ピョンチャン)オリンピックを機に米朝相互停止と米朝対話、平和協定の実現
を求める共同行動」を企画。当日、150に及ぶ団体・個人の連名で東京の米国大使館への申し入れ行動を行った。この行動には韓統連や留学同など在日の皆さんも参加し、韓国内での行動との連携も表明した。

 虎ノ門の路上集会で挨拶した平和フオーラムの藤本泰成共同代表は「日本はかつてアジアに対し侵略戦争と植民地支配を行った。しかし戦争では米国に負けたのであって、アジアの民衆に負けたとは思っていない。この間違いを正し、朝鮮・アジアとの新しい関係を作ろう」とアピールした。
 この数年、米国大使館は市民行動に対し固く扉を閉ざし、大使館のはるか手前で警察に規制させ、申入書も受け取ろうとはしない。仕方なくJTビル前で申入書を読み上げ、代表団50人余で「米韓合同軍事演習を中止しろ」鞠米朝対話を開始しろ」「平和協定を締結しろ」と声を上げた。
 最後にまとめの挨拶を行った日韓民衆連帯全国ネットワークの渡辺健樹共同代表は「安倍政権は米韓に働きかけて合同軍事演習を再開させようとしている。このような動きは絶対に許せない。これからも東アジアの平和のために連帯していこう」と呼びかけた。

 

(編集部)

 

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