たたかいの現場から

931号

◎公共職業訓練をなぜ民営化? CAD講師解雇争議でストライキ

 2015年3月まで東京都の能力開発センター4校に「CAD(Computer Aided Design)製図科」があり、31人の非常勤講師が働いていました。14年10月、突然、民間委託すると告げられ、講師は31人全て解雇となりました。


 公務公共一般労組は類似科目等への斡旋など雇用継続を求め団交を重ねましたが、らちが明かず、東京都労働委員会に申し立て東京地裁に提訴。3人の原告で争議を始めました。
 東京都は非常勤職員を組織する公共一般労組との団体交渉を長年拒否し続け、5年有期雇用の導入や賃下げを一方的に強行。14年2月最高裁決定で、憲法28条にも触れるとし、公共一般との団交が義務付けられました。これに対する新たな対抗策が、「労組法適用」の訓練講師を職場ごと消滅させる攻撃です。


 3月1日、スト日和の快晴の下、東京都CAD争議事件の早期解決のため、昨秋の第1波に続いて、ストライキを決行しました。都庁前には多くの組合旗がはためき100名を超す支援の熱気に包まれました。
 各団体の方々による「すべての人に健康で文化的な生活を保障するために、職業教育・職業訓練を公的に無償で保障することは世界の常識です。公共職業訓練の縮小・民営化はとんでもない」「CAD争議は中嶋さんらの首切り反対だけではなく、都民、国民の生きる権利を保障する闘いでもあります」等々の発言に励まされました。

 

 私たち原告3人は共に今回の非常勤講師募集に応募しましたが、3人とも不採用になりました。
 私は、東京都CAD争議を通し、「公」でやるべき公共職業訓練を、なぜ民間委託にするのかを徹底的に追及します。
 本日共にストに参加した杉並の非常勤学校図書館秘書の雇止め撤回をめざし、憲法に保障されたストライキを通して、公共一般組合員3千人の先頭に立って闘う決意を述べました。

中嶋 祥子(東京公務公共一般労働組合委員長/東京都CAD争議原告)

 

1500円は当たり前 最賃キャンペーンが始動

 最低賃金の引き上げを求めて、およそ70人の労働組合活動家や組合員が2月27日、新宿駅東口で通行人に「労働組合に加入して時給1500円を実現しよう」と呼びかけた。


 新潟から参加した新潟青年ユニオンのメンバーは、食費を削るほど低い給料で生活している実態をマイクで訴え、「『なぜ昼食を抜くのか』と聞く会社の社長に向かって『給料が低いからだ』とは言えない」などと語った。
 時給1500円を掲げると、必ずと言っていいほど「高すぎる」という声があがるが、実際の年収はそれでも300万円未満。数年前にアメリカから広がったファストフード労働者の運動では、時給15ドルと労働組合結成を求めた結果、全米で次々と最低賃金の引き上げへとつながった。


 日本でキックオフしたこのキャンペーンは、下町ユニオン、全労協全国一般、首都圏青年ユニオンなどナショナルセンターの違いを越えた労働組合が参加し、審議会に向けて今後、全国でイベントや行動を企画する。新宿行動には、10以上の組合や団体が参加した。

 

松元 千枝(team rodojoho)

 

◎求職者からの苦情は増加の一途 「詐欺求人」で相談ホットライン

 2月25日、日本労働弁護団・ブラック企業被害対策弁護団共催で、「詐欺求人」をメインテーマにした全国規模(全国31ヵ所で開催)のホットラインを開催した。詐欺求人とは、端的にいえば、求人票が実際の労働条件とは異なる(または、重要な契約内容が十分説明されていない)という問題である。


 詐欺求人の問題の被害は深刻だ。厚労省によると、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違について、求職者から苦情等がなされた件数は、年々急増している(2013年度7783件、14年度9380件、155年度1万2252件)。
 他方で、多くの苦情にもかかわらず、被害実例はあまり報告されていない。これは、多くの当事者が求人詐欺に気づいても、1.速やかに退職する 2.我慢して働き続ける、のいずれかを選択し、あえて弁護士等に相談し法的解決を試みるケースはほとんど存在しなかった。
 そのため、詐欺求人が野放しとなり、就職市場で不公正な競争(=だまして募集する企業が得をし、正しい情報を提供した企業が損する)が放置されている。


 ホットラインの全国での総相談件数は約80件と伸び悩んだ。とはいえ、このホットラインが無駄だったわけではない。実施過程で、メディアに詐欺求人問題を多く取り上げていただき、問題を周知できた。

 詐欺求人問題は、労働者が就労開始の入口段階から、使用者に一方的な労働条件を「詐欺」行為を通じて押しつけられるもの。これに対して、労働者が声をあげる契機をつくり、これを許さない運動が求められている。


 現在、この詐欺求人問題の法改正に向けた有識者会議が開催され法制定に向けても動き出している。今後もこの詐欺求人問題には注目して欲しい。

 

嶋ア 量(日本労働弁護団事務局長)

 

◎日日刻刻  非正規割合37.9% (2.15〜25)

 

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