たたかいの現場から

896号

組合室退去問題で勝利判決 橋下市政下の夜 明ける日は近い

 大阪市が庁舎内の労働組合事務所を退去させた問題で、大阪市労連をはじめ、自治労連系の労組を含め8労組が使用不許可処分の取り消しを求めた訴訟に対し、9月10日、大阪地裁は「大阪市の対応は団結権を侵害した不当労働行為に当たり、処分は違法である」との判決を下した。

 橋下市長は、地裁は市長判断に対する認識不足であると、直ちに控訴の方針を決定した。


 今回の判決に先立ち、橋下市長は、自らが先頭に立って思想チェックともいえるアンケートを全職員に強要したいわゆる「アンケート問題」に対して、大阪府労働委員会、中央労働委員会から不当労働行為であるとされ、大阪市会も中労委命令の受け入れを示唆する対応を行う中、8月6日に市労連に謝罪文を手渡したばかりある。
 橋下流民意をふりかざし、密告制度を含め労働組合敵視政策を打ち出してきたことに対し、ひとつの結論が出たといえる。
 だが、橋下市長誕生後3年近くの間、繰り広げられた労働組合運動の弱体化をねらった攻撃は、労組にとって痛烈なボディブローになっていることも事実である。
 チェックオフの廃止、相次ぐ給与カット、要員凍結、経営形態の見直しによる現業切捨てと、労使関係適正化条例によって、本来労使で協議決定すべき課題も当局サイドからの通知事項的な対応である。


 かつて、100%近い組織率を誇っていた市労連傘下の大阪市職、大阪市従の下部組織の中には、非組が増加するとともに、役員が集まらない、機関会議が満足に開催できないなどの状態に追い込まれているところもある。
 明けない夜はない。維新の会より特別区の5区案が示されたが、なんら予算的裏づけもなく、失笑を買っていることで明らかなように、大阪都構想が夢物語に過ぎないことが徐々に市民に伝わってきている。
 一方で、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の閣議決定と、戦争をする国づくりを進める安倍政権下にあって、大阪市が誇りうる平和歴史博物館「ピースおおさか」は、橋下市長の指示により大幅に加害の歴史展示を削除することを決定し、来年4月にリニューアルオープンすることとなっている。


 我々は、労働委員会や司法の判断のみに労働組合の行く末を委(ゆだ)ねるのではなく、今こそ労働組合の社会的役割を見つめなおし、反橋下、反維新の会の先に、労働者・生活者優先の社会を展望し行動していくことが求められている。


大阪市の自治体労働者

 

「金より命」とオキュパイ3年 経産省前テント 脱原発訴え

 経済産業省前の「脱原発テント」が3年を迎えた9月11日、およそ800名の市民が経済産業省を人間の鎖で囲み、原発を再稼働させてはならない、福島の原発災害を繰り返してはならないとの願いを新たにした。
 集会とヒューマンチェーンでは、「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人でもある、ルポライターの鎌田慧さんも発言。「経済のために人が死んでもいいなんて絶対に許せない。金よりも命が大切なのは当たり前。全国でテントを作って民意を届けよう」と訴えた。


 座り込みを始めて3年の間に、右翼団体や経済産業省から、暴力的にテントを撤去しようとする行為があった。

 「夏は蚊に刺され、冬は足踏みをして体を暖め、時にネズミと視線を合わせながらみんなで守ってきた」と3年を振り返って立川自衛隊監視テント村の岩下雅裕さんが語ったように、原発災害という国家的暴力に対しても、非暴力を貫いてきた。

 「石の上にも3年」。鎌田さんは、経産省前のテントの存在を「偉大な闘争」と呼ぶ。


 ふるさとの双葉町を奪われて、都内に避難している亀屋幸子さんは、経産省前テントを「第二のふるさと」と慕ってきた。金曜日には首相官邸前の再稼働反対行動へ参加し、その前後には、テントへも足しげく通っている。福島原発を制御できずにいながら、ほかの原発も再稼働しようとするこれまでの政府に対して、唯一、被害者として意見をぶつけることができる場所はテントしかないと亀屋さんは言う。10月14日には、経済産業省から提訴された地裁での8回目公判が開かれる。亀屋さんも意見陳述でこう証言する予定だ。


 ニューヨークのウォール街から世界中に広がったオキュパイ運動では、非暴力で民衆のための政治を訴え続けた。一時は解体させられたかのように見えるが、東京・霞ヶ関の経済産業省前のオキュパイテントは、原発のない社会がまっとうされるまで今日も民衆のための言論の場として開かれている。

 

松元 千枝(team roudoujyouho)

 

『ブラック企業大賞2014』 大賞にヤマダ電機

 労働者に劣悪な労働を強いて使い捨てる「ブラック企業」。これらに括弧付きの「表彰」をし、社会的な批判の声を高めるため企画された「ブラック企業大賞2014」の授賞式が9月6日、東京都千代田区で行われた(ノミネート企業一覧は別表参照)。
 今年ノミネートされた企業は全11社。その中から家電量販店チェーンのヤマダ電機が、実行委員の協議で決まる「大賞」と、インターネットなどの一般投票で選ばれる「ウェブ投票賞」をダブルで受賞した。


 過労死ないし過労自殺者を出した企業は5社あったが、同社の場合、直接のノミネート理由である2007年の過労死事件のほか、04年、13年にも連続して過労死を出していた可能性が高いにもかかわらず反省が見られないこと、さらに過労死ラインに相当する店長が昨年9月時点でも全国607店舗中64人いるとの週刊誌報道もあり、再発の恐れが高いことも決め手となった。


 そのほか、7月に「すき家」の労働環境に関する第三者委員会の報告書が公表され、深夜のワンオペ(1人勤務)などの是正が求められているゼンショーホールディングスには「要努力賞」を授与。

 さらに残業代の未払いなどで今年8月に仙台労基署から行政指導を受けていた「たかの友梨ビューティクリニック」には、エステ業界全体で長時間労働、サービス残業が蔓延していることから「業界賞」が贈られた。
 同社では労働組合に加入した社員に対し、高野友梨社長が自ら「労働基準法などを守ったら会社は潰れる」などと圧力をかけていたとされる。だが授賞式後に行われたシンポジウムでは、実行委員で弁護士の佐々木亮氏が、「労働基準法違反は犯罪。労基法を守ると経営が成り立たないというのは、『私は犯罪をしないと経営できない』と言っているのと同じ」と指摘した。


 本イベントは労働組合の関係者やジャーナリストらで構成される「ブラック企業大賞実行委員会」が2012年から主催し今年で3回目。来年2015年も開催の予定だ。

 

古川 琢也(ルポライター)

 

働くルール破壊に反撃 雇用共同アクションが集会

 安倍政権の雇用破壊に職場・地域から「太い反撃」をつくろうと、9月17日、雇用共同アクションが開いた集会に130人が集まった。


 深谷信夫・茨城大学名誉教授(労働法)は講演で、憲法の全体像から説き起こす。

 平和的生存権と「国民の自由と権利」にもとづいて働く権利、最低労働条件の法定が位置づけられる。そうした権利のカタログの上に「労働条件の労使対等決定原則」があるとし、「まだ破壊されていない憲法と労働法の原理原則を手に、安倍政権が壊そうとしている日本社会を取り戻そう」と提起する。

 また、雇用・労働条件が会社の思うままになっている原因が「ニセの過半数組合」(管理職、非正規を含めれば少数)がお墨付きを与える就業規則にあると指摘。「就業規則にメスを入れよう」と熱く訴えた。


 目から鱗の講演を受け、現場からの報告に。

 コミュニティユニオン首都圏ネットワークの岡本哲文事務局長(下町ユニオン)は広島での、国交省による偽装請負との闘いを紹介。「反対だけでなく、私たちが求める労働法制を対置し、現場での闘いを展開しよう」。
 JAL不当解雇撤回原告団の長澤利一さんは不当解雇以降、退職が止まらない厳しい職場状況が「空の安全」を脅かしていると告発。
 東京地評の伊藤潤一議長は、全力で派遣法改悪をつぶそうと呼びかけ。大阪ユニオンネットの垣沼陽輔さん(全日建近畿地本)は建設現場の外国人研修生との連帯を提起。団結まつり実行委の藤平良祐さん(学生)は、「学生は奨学金で借金漬け。返済のために自衛隊へ、とさえ言われる。安倍辞めろ!の(合い言葉の)下、みんなの結集を」。


 全労協の柚木康子常任幹事が、9・29国会開会日の取り組み、10・8パソナ社前行動など秋の行動を呼びかけた。

 

北 健一(ジャーナリスト)

 

 

日日刻刻  全産業の人件費減(財務省調査)(8.29〜9.10)


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