たたかいの現場から
873号

新聞労連が緊急声明
    「特定秘密保護法案」の国会提案に反対する (資料)

2013年10月1日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 日比野 敏陽

 

 安倍内閣は10月15日から始まる臨時国会に「特定秘密保護法案」(秘密保護法案)を提出しようとしている。報道によると、政府が自民党に示した法案では「報道の自由」を盛り込むが「知る権利」は今後の検討課題とするという。「知る権利」も「報道の自由」も憲法で保障された基本的人権であり、追加事項として盛り込めば済むものではない。今回の政府対応は、どのように繕っても秘密保護法が本質的に憲法違反であり、そこには基本的人権を踏みにじる意図が存在することを浮かび上がらせた。そもそも、パブリックコメントの受け付けがわずか2週間で締め切られたことでも明らかなように、国には国民の意見を聞く気があるのかも疑わしい。情報統制を基本的人権の上位に置く法律は違憲であり、そのような法律は不要である。安倍内閣は秘密保護法の国会提出方針を撤回すべきだ。


 法案概要によると特定秘密保護法は、防衛や外交など安全保障にかんする4分野で、行政機関の長が決めた「特定秘密」を漏らした公務員を最高懲役10年に処し、情報を漏らすよう共謀、教唆、扇動した者も処罰する。しかし4分野の内容は極めてあいまいであり、「行政機関の長」による恣意的な運用はいくらでもできる。指定される秘密として法案概要の別表に「自衛隊の運用」などが記載されているが、「運用」などという言葉はどのような拡大解釈も可能になる。
 処罰対象は秘密の漏えいだけでなく、教唆や扇動も含まれる。極めて曖昧であり、秘密を取材しようとする記者やジャーナリストが教唆罪に問われる危険性が高い。秘密を取り扱う公務員に繰り返し取材したり情報提供を要請すれば違法な「特定取得行為」とされてしまうだろう。そもそも、誰が秘密を取り扱っているのか、どこにどのような秘密があるのかも知らされないため、公務員を中心にこれまで以上に萎縮が強まることは確実だ。秘密の存在を知らされないまま接近したジャーナリストも処罰されることになる。


 法案概要は、秘密を国会に提出する条件として非公開の秘密会であることを求め、国会議員や職員も秘密を漏らせば処罰対象となる。このような仕組みは国政調査権の重大な侵害であり、民主主義を根幹から覆すことになる。そもそも、国の情報は主権者である国民のものであり、特定の政治家や官僚の所有物ではない。主権の行使は国政について十分な情報を持っていることが前提になる。秘密保全法は国民の主権を制限する企みであると言わざるをえない。いま必要なのは情報統制法ではない。国の国民に対する説明責任義務の明確化であり、それを担保するための公文書管理制度と情報公開法のさらなる充実である。


 歴史を顧みれば、国がメディアと情報の統制を強化し国民を真実から遠ざけようとするとき、その背後には必ず戦争への準備が進んでいた。安倍政権の狙いは改憲、集団的自衛権の行使容認と同一線上にあり、それは戦争への布石である。新聞労連はあらゆる戦争に反対する立場から秘密保護法案に反対する。

 

「のりこえねっと」賛同者募集中

 9月25日、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(のりこえねっと)キックオフの記者会見が行われた。
 記者会見が行われた新大久保をはじめ全国各地で在日韓国・朝鮮人を標的とするヘイトスピーチが急増している。しかし、大多数の人々は「言論の自由」の名の下にそれを黙認し続けている。
 のりこえねっとでは、「民族や国境の壁を超えて、人権の普遍的価値を擁護し、防衛する行動」、「日本の公民権運動」共生社会をめざす幅広い具体的な運動として立ち上げた。
 今後、ヘイトデモやヘイトスピーチへの対策をはじめ、学習会などを通じたエンパワーメント、反レイシズムの番組や著名人を含むメッセージのCM製作などの広報告知を行っていく予定だ。本誌でも、講演録やインタビューなどを順次掲載していく予定だ。

松元 千枝(ジャーナリスト)
編集部 

熊沢誠さんの講演とシンポ開催

 9月28日(土)午後、東京の田町交通ビルで「『労働組合運動とは何か』熊沢誠さんの講演とシンポジウム」が開かれた。連合、全労協、全労連系の垣根なく、若い層や女性の参加者も一定数見られ、計86名が参加した。

 今回の講演会は、当初、協同センター・労働情報の臨時総会の記念講演として企画されたが、諸般の事情で独立した企画となったもの。


 熊沢さんの新著『労働組合運動とはなにか』(岩波書店)は、労働組合と名がつく本は売れないと、編集者から反対されたそうだが、3刷を重ねているとのこと。まだ労働組合という存在は捨てたものではない。
 講演の内容は追って本誌で紹介するが、独特の熊沢節とシンポの内容は、参加者の共感をえたはずだ。主催者挨拶とコーディネーターを務めた東海林智(新聞労連)さんをはじめ、中島由美子(全国一般東京南部)さん、河添誠(首都圏青年ユニオン)さん、三沢昌樹(練馬区職労)さんという論客と熊沢さんの掛け合いは、実にユニークで、テーマは非正規労働者問題、社会的課題へのアプローチ、女性問題と多岐にわたった。
 今回のJR北海道の凄まじいばかりの安全軽視という事態の中で、熊沢さんは「メディアは労働環境の深刻さは報じても、労使関係や労働組合の役割は報じない」と力説する。
 それでも熊沢さんは、日本的企業別労働組合を前提とするスタンスで(「企業別組合の唯一性を疑う」とのレベルで)、「再生」を訴える。
 今回の講演や著書の中でも、世界の先進例とあわせ、日本の中でも実績を印した労働組合を次々に紹介し、その可能性が力説された。意気込みと期待は、強く共有できたと言える。


(編集部 水谷研次)

 

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