959号
日韓
サンケン闘争が勝利 解雇撤回・復職かちとる
6月2日、韓国サンケン労組は会社と合意に達した。その内容は、1.整理解雇の撤回、2.生産部門の廃止を撤回し16人の整理解雇者全員を生産職に復職させる、3.労働組合の存在を認めて活動を保障する、4.これまでの労働協約を維持する、という画期的なものだ。
韓国サンケンは、1974年に埼玉県新座市にあるサンケン電気が100%出資して、韓国の馬山輸出自由貿易地域につくった子会社だ。
昨年9月30日、生産部門の労働者34名全員が整理解雇された。赤字を理由に組合員を追い出す、組合つぶしの解雇だった。
労組は昨年10月から日本に代表団を送り、本社への抗議要請行動を行ってきた。朝、出勤してくる社員にビラを配り、マイクで解雇が不当であることを訴え、「生産部門閉鎖」を決めた本社として責任をもって解決するよう要請した。
凍り付くような本社前での座り込みも、労組が準備した生姜湯やゆず茶で暖をとり、寒さを吹き飛ばすユルトン(労働歌に合わせた力強い踊り)を行って元気を出した。最寄り駅である東武東上線の志木駅頭での情宣、毎週水曜日、池袋のメトロポリタンビルにある海外営業本部への要請行動、川越工場前での昼休み情宣など行ってきた。
12月27日、韓国の慶南地方労働委員会で「不当解雇」の裁定が出た。「原職復帰」と未払い賃金の支払いを命じるものだった。会社は従わずに中労委に提訴。今年4月、中労委から和解勧告が出た。会社は組合員一人一人に対し、解雇慰労金を吊り上げ「60ヵ月分」というそれまで考えられない金額で退職するよう迫った。
家庭の事情で泣く泣く辞めざるを得ない組合員も出てきた。結局16人が残り、原職復帰を求めて闘った。中労委の裁定は地労委と同じ「不当解雇」だった。
会社から5月12日に出勤するようにと通知が来たのはその前日だった。しかし出勤したところ、工場の中には機械も作業台も何もなく、ただ16個の椅子だけが置いてあった。工場のほかの場所には行けず、トイレにしか行けない監禁状態で、することは何もなかった。これがなぜ「復職」なのかと、また労組を無視したやり方にさらに抗議を強めた。
そして6月2日、ついに労使で合意書を交わした。
歴史的で画期的な勝利はどうやってもたらされたのか。まず、地労委・中労委での勝利判決の重さ。それは、韓国での組織された労組の闘いが大きい。
私は6.2合意直後韓国に行き、金属労組、民主労総慶南支部を訪問し、そこにいる社労士や弁護士とも会い組織の力を感じた。徹底した討論と、研ぎ澄まされた戦力で強固に闘う韓国の労働運動の力強さを感じた。
また日本遠征闘争の成果も大きい。リーダーのキムウニョンさんは、当初より「勝てる」と自信をもって闘っていた。「必ず職場に戻る」と。静かな面持ちの中に確固たる信念を持っていた。「踏みにじられた労働者の尊厳を取り戻す」と。
異国の地で寝食を共にして闘うことは、容易なことではないが、韓国サンケンの労働者たちは、兄弟姉妹のように深い信頼関係を築き、お互いに言いたいことを言い合う関係、お互いをとても大切にする関係をつくっていた。本社前や志木駅頭での演説でも素直に自分の思いを語っていた。「誇りをもって働いていたのになぜ解雇するのか。経営の問題は経営者と管理者の責任ではないか。なぜ現場の労働者にしわよせするのか」と実にまっとうな話をしていた。
229日に及ぶ日本遠征闘争の中で、ウニョンさんはとても興味深いいくつもの話をした。
その中で特に印象的というか、身につまされたのは「韓国では労働運動でも学生運動でも、後輩を育てることをとても重要に考えている」ということだった。日本ではどこへ行っても運動の現場は年配者ばかりだったのが気になっていたのだろう。「教育」「学習」に力を入れていることを話していた。
韓国サンケンでは一時期500人もの労働者が働いていた。
その広い工場を閉鎖し、移転することになった。移転と生産部門の稼働まで、1か月の有給休暇が会社と合意されている。しかし油断はできない。会社は労組の人数が少なくなったことを口実に、またもや組合つぶしの攻撃を仕掛けてきている。労組は、ハチマキを締め直して新たな闘いを開始した。
尾澤 邦子(韓国サンケン労組を支援する会)
東京
「アリさんマークの引越社」裁判で和解 西村さんが営業職へ復帰
「営業、やっぱり楽しいです」と、役職欄に「営業」と記された自身の名刺を差し出しながら笑う、西村さんの顔はいつにも増してツヤツヤしていた。
終日古紙の裁断作業を強いられる「シュレッダー係」への配転から約2年。西村さんは元の営業職へ復帰した(11表紙写真)。
バスや電車を乗り継いで片道90分以上かかっていた通勤時間も、自転車に乗って片道10分程度となった。
「アリさんマークの引越社」で知られる「引越社関東」の社員・西村有さん(仮名・35)が、「シュレッダー係」への配転無効と慰謝料の支払いを求めていた訴訟で、東京地裁にて5月24日に和解した。会社は「異動が社会的相当性を欠いていた」と認めて謝罪。西村さんを6月1日より元の営業職へ戻し、解決金を支払うこと等に合意した。文字通りの大勝利的和解となった。
「シュレッダー係で働いている時は、客観的に自分を見て『彼はいま、こんな苦行を強いられているのだな』と考え、耐えてきた。様々な嫌がらせを受けても、元の職場へ戻れることを、身をもって証明できた。今はまだ、未払い賃金や弁償金の問題が残っているけれども、労働組合のおかげで自分はいまここに立てている。そのことを、引越社だけではなく、いろんな職場で苦しんでいる人たちにも伝えていきたい。変えられると伝えていきたい」と、西村さんは力強く語った。
2015年1月、営業職だった西村さんは、営業車両を運転中に事故を起こしてしまう。長時間労働による過労が原因だった。詳しい内訳を知らされないまま、会社から弁償金48万円を請求された。疑問を持った西村さんは、プレカリァートユニオンへ相談し、団体交渉を申し入れた。同年6月より、「シュレッダー係」へ異動となり、賃金は半減。配転無効の訴訟から11日後には懲戒解雇となり、解雇理由を「罪状」と記した文書がグループ全社内で掲示された。
懲戒解雇撤回後も、約2年間にわたって追い出し部屋的な職場「シュレッダー係」での業務を強いられていた。
土屋 トカチ(映画監督)
京都
米軍レーダー配備反対 300人が集会とデモ
6月4日、米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会などでつくる実行委員会の主催により、「米軍Xバンドレーダー基地撤去!京丹後市は住民の自治と安全・安心を守れ!京丹後を東アジアの平和の発信地へ!6・4京丹後総決起集会」が、京丹後町内にある久僧公民館で開催され、約300人が参加した。
沖縄「建白書」を実現し未来を拓く島ぐるみ会議共同代表の高里鈴代さんや、韓国からサード(THAAD/終末高高度防衛ミサイル)配備反対金泉対策委員会・円仏教聖地守護非常対策委員会の方々も参加した。
まず地元の「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の永井友昭事務局長から現地報告が行われた。
朝鮮民主主義人民共和国による相次ぐ弾道ミサイル発射を理由に、海上自衛隊が米軍艦艇への「武器等防護」を行ったことによって、「Xバンドレーダーがある経ヶ岬の危険度は高まっている」と語り、地元に暮らす人々の不安や緊迫感が伝わってきた。
韓国からの参加者からは、「米国はサードを配備する理由として、北朝鮮の核開発、ミサイルの恐怖から韓国を守るためと言うが、サードは北朝鮮のミサイルを防げるものではない。むしろ東アジアの平和を壊すものだ。配備されたサードミサイルそしてXバンドレーダーは、沖縄と経ヶ岬と韓国を結ぶ三角形で中国を睨む、アメリカによる東アジア支配のためのものである。そして私たちは、日本の安倍首相を大変憂慮している。東アジアの平和を守るために、日本のみなさんには必ず憲法改悪を止めて欲しい!」と力強く訴えた。
その後、久僧海岸からデモに出発した。
この日は天気も良く、参加者たちは京丹後の海の美しさに感動の声を漏らしながら海岸沿いを歩いた。基地や反対運動に対する地元の人々の思いは様々であることに配慮し、民家の問を歩く時は、集会やデモの趣旨を語りかけるように伝えた。基地の前では、「京丹後にXバンドレーダー基地はいらない!」と大きな声でシュプレヒコールを上げた。
基地は、民家の畑から道路一本挟んだ目の前にあり、そこではデモ隊を横目に見ながら畑仕事を続ける男性の姿があった。
これまで、広々とした畑と京丹後の美しい海を臨むことができていた場所に、突如米軍基地が建設され、景色が一変したことをどのように受け止めているのだろうか。地元の人々からは、Xバンドレーダーによる電磁波の影響も心配されている。
関西在住者でも、京都に米軍基地があることを知らない人が圧倒的に多い。まずは、この現実を人々に伝えていくことが求められている。
大椿 裕子(大阪教育合同労働組合執行委員長)
労働時間
36協定の上限規制は不要 労働法学者が「共同声明」
働き方改革をめぐる厚労省・審議会での議論が大詰めを迎えた6月5日、労働法学者有志が「労使協定時間の罰則付き上限規制では生活時間は取り戻せない」との「共同声明」を発した。
署名しているのは、浅倉むつ子(早大)、表田充生(神戸学院大)、唐津博(中央大)、毛塚勝利(法政大)、武井寛(甲南大)、長谷川聡(専修大)、浜村彰(法政大)の7名。
声明は、いま論議されている、労使協定(36協定)時間の限度基準に新たに罰則を設ける規制案は、「長時間労働の是正に資するものではなく、むしろ有害さえある」と指摘するとともに、特別条項を用いた場合には、複数月平均80時間、単月100時間未満まで認めることになり、「労働者を過労死するまで働かせることを法認するもの」であると指摘。現在でも9割以上の事業所で時間外労働が45時間を下回つている現状では、「上限規制はなんら『働き方改革』を促すものではない」としている。
「声明」はさらに、「豊かな家族生活、社会生活を営むために不可欠である『生活時間』の確保のためには、日々の生活が1日のサイクルであることを前提として、1日10時間の最長時間規制をその中心に据え、そのうえで、例えば、時間外労働への対応として、時間清算(休暇調整)を基本とすること」を提案。市民による企業の労働時間のモニタリングという考え方も示している。
長時間労働問題が、過労死問題など健康問題に収敏しがちであるが、「声明」はそれにとどまることなく、「より視野を広げること」を強調。「長時間労働を是正するには、『生活時間』の観点を取り入れた新たな発想で、労働時間法制のあり方を議論する必要があることを訴えたい」と結んでいる。
(編集部)