たたかいの現場から
847号

「脱原発基本法」でさようなら原発を  早期法制化に向け大きな力を

 3・11以降、日本国内で脱原発の動きが一挙に高まってきた。だが原発利権を手放したくない原子力ムラをはじめとする集団は、圧倒的多数の世論の反対を押し切ってまで野田首相に大飯原発再稼働を強行させた。  こうした原発依存症の行政を、断ち切る目的で法律の制定を目指す「脱原発法制全国ネットワーク」の運動がはじまった。8月22日(水)11時より、衆議院第一議員会館会議室において10人の代表世話人が出席して記者会見が行われた。  冒頭、代表世話人の一人である河合弘之弁護士から「運動の盛り上がりを固定化させるために、国民の総意として脱原発を法制化したい。議員立法として2020年から25年までの出来るだけ早い時期に脱原発を達成する」など、経過と趣旨の説明が行われた。  続いて各代表委員より「次世代の人間が生存し続ける為に必要な法案」(大江健三郎氏)、「決議を実現する運動として進めたい」(宇都宮健児氏)、「市民の思いを法制化して政府を縛る」(鎌田慧氏)、「安心安全社会を体現する法律」(小野寺利孝氏)、「本物の法治国家に生まれ変わるため」(木村結さん)、「次の選挙では大きな争点となる」(飯田哲也氏)、「エネルギー基本計画の見直しは、市場メカニズムでは不十分」(伴英幸氏)、「核と人類は共同できない」(井上年弘氏)、「持続可能で平和に暮らせるエネルギーを追及したい」(大林ミカさん)と、それぞれ法制化に賛同する理由が述べられた。  また、今国会での法制化は出来なくとも「脱原発法制」を各議員の踏み絵にし、最後まで見届けていきたいとの、したたかな戦略も報告された。

岩崎松男(本誌副編集長)

デイベンロイ争議  継続雇用かちとる

 8月24日夜10時ごろ、東京・大田区の本社工場閉鎖をめぐり労働争議が続いていた全国一般東京東部労組デイベンロイ労組支部は、東京都労働委員会で会社側デイベンロイリネンサプライとの和解協定書を締結した。  工場閉鎖で職場まるごと奪われる攻撃に直面した生産部の労働者のうち最後まで闘った17人の組合員の継続雇用を実現できた。今後は17人が通勤できる場所(大田区東糀谷)に職場を移転し、そこで働くことになる。仕事内容も17人の希望通りの業務を認めさせた。さらには17人のうち1人は会社の制度上で定年退職の68歳を今年迎えるものの引き続きの雇用延長を約束させた。
 団結の拠点である組合事務所も移転地に再設置することになった。また、会社が組合に解決金を支払うことにもなった。
 工場閉鎖自体は実施されるものの組合員の実質的な雇用保障を勝ち取ったことが最大の成果。「希望退職」(4ヵ月分の賃金加算)という名の解雇の脅しや目先のカネに屈することなく仲間を裏切らなかった17人の組合員を私たち東部労組は心から誇りに思う。労働者にとって労働組合こそ最強のセーフティネットであること、団結して闘えば必ず活路は切り開けることを実証した。
 パート女性労働者を先頭に闘った5日間のストライキ闘争を頂点に、東京都の測量の実力阻止闘争、事実上の親会社にあたるサニクリーンへの「使用者概念拡大」闘争、2度にわたる東京都労働委員会への不当労働行為救済申立の闘いなど、労働者自身が体を張って闘った。会社が雇用や生活を守らないまま工場閉鎖を強行した場合には職場占拠の闘いを決意していた。同時に、友好労組や弁護団をはじめ多くの献身的な支援があったからこその成果である。物心両面にわたる支援に感謝を申し上げます。
 今後は、和解したとはいえ、デイベンロイ労組支部には新しい職場での激烈な闘いが待っている。17人の組合員と営業部、商品課、庶務課など計54人の支部で再出発する。東部労組デイベンロイ労組支部への引き続きの支援をよろしくお願いいたします。

須田光照(全国一般東京東部労働組合書記長)

童話になった「さんさカフェ」

東京を出発したのは深夜12時だった。東北道を北上すること約6時間。高速を下りてから約1時間。東京から7時間かけようやくたどり着くのが、宮城県南三陸町だ。  「さんさカフェ」での出版記念パーティーは大いに盛り上がった。発行元明石書店の挨拶から始まり、乾杯をすると、厨房から沢山の料理が出てきた。パーティなどは慣れていないのか、厨房は大忙し。  厨房の壁には、レシピの書かれた紙が沢山貼られていた。その中に「出版記念用」と書かれたものがあり、皆でコース料理を考えたのであろう、「五目おこわ」「サラダ」「刺身」「うどん」などと書かれていて、派手さこそ無いが、被災者でもある「さんさカフェ」スタッフの心のこもった料理は、どれもとても美味しかった。  パーティーの中では、日フィルのトロンボーンとチューバの奏者二人が、とても心の温まる演奏をしてくれた。カフェの前を通りかかった歌手の方が、飛び込みで演奏してくださるなど、「さんさカフェ」は、被災地の「拠点」となりつつあることを実感した。  「さんさカフェ」のある南三陸町は、先々月の7月から劇的に変化していた。津波によって破壊され、ずっと放置されたままの病院や、マンションが取り壊され、復興への足取りが速くなっているのを感じたが、カフェスタッフの声には不安の声もある。  町や県が進める復興と、地元民にとっての復興は少し違うのかも知れない。そんな、地元の人たちと気軽に交流することができる「さんさカフェ」。南三陸町を訪れた際はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。新聞やテレビでは報道されない、被災地の現実を実感できるかもしれません。

坂本啓太(名無しの震災救援団)

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