たたかいの現場から

904号

◎中国人女性へのマタハラ解雇 均等法9条4項使って地位確認の提訴

 30代の中国人女性・何尭(カ・ギョウ)さんは、2004年に来日して大学等で日本語を学んだ後、2011年からカバンの製造・卸業の会社であるネギシ(東京都台東区)で、製造管理や営業サポート等の仕事をしてきた。在留資格は人文知識・国際業務である。

 ところが、社長に妊娠を告げた2ヵ月後、これまで一度も言われたことがない「協調性がない」「社員として適格性がない」という理由で、突然解雇された。出産後も、子育てをしながら働き続けようと考えていた何さんは、強いショックを受けた。会社で働き続けることができていれば、来年3月には、在留資格を永住に変更する申請要件を満たすはずだった。


 会社は、原告が「妊娠したこと」を解雇の理由に挙げてはいないが、何さんは妊娠以外に思い当たるところはない。また、何さんは、解雇事由を記載した就業規則を一度も見たことはなかった。

 

 男女雇用機会均等法9条4項は、妊娠中の女性労働者に対してなされた解雇を無効とし、事業主が当該解雇が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明したときはこの限りではないと、規定している。本件解雇も、妊娠中の女性労働者に対する解雇であるから、会社が妊娠等を理由としたものではないことを立証できなければ無効である。


 2014年12月19日、何さんは、雇用契約上の地位と解雇後の賃金支払いを求めて、東京地裁に提訴した。
 妊娠や産休・育休の取得を理由とする解雇はマタニティー・ハラスメントであるが、会社が正面から妊娠等を解雇理由にするケースは稀であり、本件のように他の理由を挙げることが大半であろう。

 マタハラ解雇に遭っても、出産を控え、もしくは、生まれたばかりの子どもを抱える中で、当事者はなかなか声を上げられず、泣き寝入りせざるをえないケースが多い。妊娠中の女性に対する解雇は均等法9条4項によって争いやすいのにもかかわらず、これまで提訴されたケースは少ない。


 何さんは、提訴翌月には出産を予定しているが、解雇にどうしても納得できず、「子どもを産む権利を守りたい」と考えて、提訴することを決めた。中国人の夫もこれに賛成し、提訴記者会見にも同席した。
 この裁判が、妊娠を理由とする解雇が許されないことを企業に対して知らせ、また、マタハラ解雇の被害者が声を上げるきっかけになればと思う。


指宿 昭一(弁護士)

 

◎経産省前テントひろば裁判 一方的な「結審」発言に抗議

 2014年12月3日東京地裁103号法廷で第9回口頭弁論が行われた。この日はわれわれは証人申請なども行い、福島県双葉町から東京に避難している亀谷さんの15分に渡る陳述も行われ、法廷全体に大きな感動を呼び起こすなど、良い雰囲気で進行したかに見えた。
 だが亀谷さんの陳述のあと、裁判官の合議の直後、村上裁判長は証人申請等の全てを却下し、「弁論を終結する」と一方的に発言した。


 実は、口頭弁論1週間前の11月27日に原告、被告、裁判長による進行協議が行われ、その場で裁判長自らが次々回(12月3日の次)の口頭弁論期日の予定を提案し、2015年2月26日、進行協議は2月17日と予定されていた。従って、われわれは亀谷さんの証言を含めて少なくとも2月26日までは弁論は継続され、特に証人申請の実現、現場検証、証拠の開示等に全力を揚げる予定であった。

 だが「全て却下」「弁論終結」ではまるで違う。村上裁判長は11月27日の進行協議の確認を自ら踏みにじるやり方で、この裁判を終結させようとしている。


 この裁判は2011年3月11日の東電福島第1原発事故に対して、その責任を追及し、原発の再稼働を止めるためのテントを、国有地明け渡し訴訟として、国が訴えたものである。国及び原告は土地明渡訴訟と言うが、われわれに言わせれば、たかが90平方bの土地の問題ではなく東電福島大事故そのものである。
 また裁判では、正清と淵上が被告として当事者となっているが、この問題はテント全体の主体性や政治的存在に関わる重大事であって、絶対にゆるがせにできない問題である。多数の自主的な当事者によってテントが管理運営されているという事実関係からも、当事者を正清と淵上に限定するのは訴訟手続きからして失当である。

 だからこそ証人調べや証拠調べを原告は一貫して拒否しており、東京地裁も国側の意向に従ってきたのである。証人調べや証拠調べが行われれば正清と淵上だけが当事者であるということは直ちに否定されるであろうし、さらにこの裁判が政治的意図のもとに引き起こされていることが暴露されてしまうのも必定であろう。そうなれば裁判自体が成り立たなくなるのも明らかである。

 こうした東京地裁の訴訟指揮は原発再稼働に突き進む安倍内閣の動きとも連動している。すなわち再稼働反対のテント裁判の早期決着と川内原発の早期再稼働である。


 われわれは東京地裁がどのような判断を行おうとも法廷上取りうるあらゆる方法を用いて、今回の暴挙を明らかにし、引き続き口頭弁論の継続を強く要求して断固として闘う決意である。

 もちろん「原発の再稼働反対」はテント設立の基本的理由の一つであって、九州電力川内原発がまさに再稼働させられようとしようとしている今、川内原発再稼働阻止を全国の仲間と共に闘い抜く。

 既に経産省前テントの有志が、川内原発のお膝元に「脱原発川内テント」を立てて三ヵ月となる。薩摩川内市久見崎海岸のテントは川内原発の直近にあり、再稼働阻止のベースキャンプとなるものだ。広々とした海岸線にさらに多くのテントが立てられ、再稼働反対の意志が表明され、その一大ベースとなることが期待される。


 東京のテントも川内のテントも決して諦めずに再稼働阻止を闘うものである。全国の皆さま、共に闘おう。(皆さまの篤いご支援、ご協力をお願い致します。)

 

淵上 太郎(経産省前テントひろば代表)

 

◎1.17ヒューマンチェーン  「女たちは真っ赤に自ら輝く」

 国会を女性たちで取り囲もう。

 嘘とでっち上げと経済的欲望から始まる戦争がいよいよ私たちの生活に近づいてきたことに危機感を持つ女性たちがそんな動きを準備していると弁護士の杉浦ひとみさんから聞いて、参加したいと思っていた。
 その行動、「女の平和ヒューマンチェーン」が行われた1月17日、赤いコート、帽子、マフラー、手袋などを身につけた女性たち7千人が参加。国会周辺をぐるっと回ったところどこにも途切れた場所はなく、文字通り女たちが国会を取り囲んだ。ただただ圧巻。

 それも安倍政権の進める政策に真っ向から挑む女性たちだ。横断幕やプラカードも工夫され、思い思いの姿はかなり格好よかった。


 安倍政権が人を分断してもの言えない社会を作ろうとするなら、萎縮して黙るのではなく、ものを言い、人と繋がって支え合っていくことこそ最も有効だ。
 安倍政権の言う「女性が輝く社会」は家父長的で、父なる政権が見込んだ、異論をはさまない女性は優遇するが、戦時性暴力の被害を告発する女性、戦争で大事な人を失いたくない女性、基地をふるさとに作らせたくない女性、原発事故の責任を問う女性、まともに食べられる仕事を望む女性、国籍や民族で差別をされるのはごめんだと思っている女性、自分の名前で生きたい女性たちの声は無視してきた。
 あなたが私たちの声を聞かないのなら、私たちが出向いて声を伝えよう。気迫に満ちた言葉、そしてコールは国会周辺に響いた。
 女たちは輝く。政権の顔色を伺いながらではなく、自分たちの真っ当な要求を掲げて。

 

池田 幸代(team rodojoho)

 

◎追悼 渡辺清次郎さん

 まだまだ仕事を沢山しなければならない清次郎さんが先に逝ってしまったことで、心に穴があいたような感じがしました。私が今ここで個人としてお別れを言うだけでなく、清次郎さんに大変お世話になり、共に闘った争議団や労働組合の活動家を代弁してお別れに言葉を捧げたいと思います。


 清次郎さんとは、私が東京地評のオルグで清次郎さんが中央区労協の事務局長の時代、1970年に初めてお目にかかりました。それから細川活版の争議になり、清次郎さんが東京争議団の議長になり、共に大変な苦労をして東京総行動を闘い、守ってきました。

 清次郎さんは、あの独特な活動スタイルから沢山の大きな争議を成功裏に勝ち取ってきました。浜田精機、ペトリカメラ、全造船、炭労、そして東京近郊では東芝アンペックスの争議や、難しかった沖電気の争議をやりました。


 そして現役を退いた後も、国鉄闘争に大変心を砕いていただき、私たちと共に闘争勝利のために一生懸命活動なさり、私たちはその中から沢山清次郎さんに勉強させて貰った。
清次郎さんとは、まだまだ一緒に活動し、沢山学ばねばいけないことがあったと思っています。

 これが最後のお別れになるとは納得がいきません。今、労働組合は窮地に陥っていますが、渡辺さんの遺志をついで日本の労働組合運動が本当に働く者、労働者のために機能できるようになるまで清次郎さんの影を背負って一生懸命頑張っていきたいと思います。

 後のことは、もっと若い人たちがやると思います。若い人たちに任せて、どうか安らかにお眠り下さい。さようなら。(お通夜での送る言葉より)

 

平賀 健一郎(中小労組政策ネットワーク)

 

 

日日刻刻  労組組織率17.5%(0.2%減) (12.16〜1.7)

たたかいの現場から バックナンバー
たたかいの現場から 投稿について

「たたかいの現場から」の原稿を募集しています。各地での闘いの様子を原稿にしてお送りください。字数は800字前後でお願いします。

 

「たたかいの現場」投稿フォーム

 

協同センター・労働情報 〒112-0005 東京都文京区水道2-11-7三浦ビル2階 Tel:03-6912-0544 Fax:03-6912-0744