899号
「君が代」起立斉唱をめぐる団交拒否は違法と中労委命令
10月30日、中労委は「君が代」起立条例に係わる団交を大阪市が拒否したことは不当労働行為にあたるとの命令書を交付した。
2012年2月、大阪市は「君が代」起立条例を制定した。教育合同は卒業式を前に、起立斉唱反対を求めて団交を申し入れた。しかし、市・市教委は団交事項でないとして団交を拒否した。
組合員の中には労組法適用となる非常勤職員が含まれていたため、組合は府労委に救済を申し立てた。府労委は2013年11月、団交拒否に当たるとして、橋下市長に団交応諾及び謝罪文手交を命じた。これを不服として大阪市は中労委に再審査を申し立てた。
中労委再審査においても争点は、(1)混合組合は申立人適格を有するか(2)「君が代」起立斉唱は団交事項かの二つだった。
中労委は、(1)地方公務員法適用の一般職公務員も労組法上の労働者だから、地公法適用者と労組法適用者で構成される混合組合は、労組法適用組合員に関しては労働組合として権利を行使できる (2)「君が代」起立条例の明確化や条例違反行為の処分基準等は組合員の労働条件だから義務的団交事項である、と判示して、再審査申立を棄却した。
橋下府知事時代の団交拒否についても、中労委・東京地裁・高裁が団交拒否を認めたため、府は最高裁に上告している。東京高裁は一般職公務員も労組法上の労働者と判示している。今回の中労委命令ともども、地方公務員は一般職と特別職で分断される根拠がなく、同じ組合に加入する道がさらに開けた。
また、中労委命令は「君が代」起立斉唱が教職員にとっては労働であることを明確にしたことから、教員等に係わっても教委・校長は交渉を受けなければならないことになる。
「日の丸・君が代」は思想良心の問題から労働問題へとフィールドを広げたのである。もちろん、中労委命令をどう活かすかは各組合の姿勢次第である。
山下 恒生(大阪教育合同労働組合特別執行委員)
派遣法改悪「廃案しかない」 連合も6年ぶり座り込み
派遣労働者の使い捨てを許すなー。労働者派遣法改正案の委員会審議が始まった29日、国会近くの議員会館前は、座り込みで抗議する連合、全労連や全労協、MICなどで作る雇用共同アクションのメンバーらで埋まり、シュプレヒコールが響き渡った。
午前9時から抗議を始めた連合は、国会前に座り込むのは、医療や税制問題で座り込んだ08年以来6年ぶり。倉庫にしまってあったという簡易イス約500個を持ち込んだ。
正午過ぎからは、共同アクションのメンバーも連合の横で座り込みを開始。労働側が一体となった“実力行使”で安倍政権の労働規制緩和に反対をアピールした。
連合の神津里季生事務局長は座り込みの冒頭、「法改正とは本来問題点をただすためにやる。けれど、今回の改正案により低賃金、不安定雇用という派遣法の問題点は何一つ解決されないどころか、ひどくする案だ。生涯派遣を強制するものであり、改悪と言う他ない」と厳しい口調で反対を訴えた。
民主党の福山哲郎政調会長は「改正は中間層を破壊する。廃案しかない」とエールを送った。共同アクションも集会で、改悪の問題点を次々と訴えた。
座り込みに参加していた組合員の女性は「低賃金で不安定な派遣労働者を増やすことが女性を輝かせることになるのか。あべこべだ」と手厳しい。40代の男性組合員は「息子は大学生だが、これ以上派遣労働が広がったら就職が心配。まともな仕事を増やすべきだ」と話した。
派遣法改正案は、通常国会では法律案に間違いが見つかるなどお粗末な形で廃案になった。臨時国会に再提出され、与党や厚労省はすんなり可決されると見ていたが、国会開会後、与野党の対立法案として急浮上した。与党も含め雇用を破壊しかねない法案自体のひどさへの理解が広がり始めているからだ。臨時国会で法案通過を阻止できれば、改正案の息の根を止めることが可能な情勢も見えてきた。
東海林 智(team rodojoho)
政府の「お墨付き」を免罪符に鹿児島県臨時議会で再稼働陳情を審議
原発の早期再稼働に執着する政府・電力業界は、保安院から看板をかけ替えただけの規制委員会による、全く根拠に乏しい新規制基準を再稼働の条件としてきた。
そして再稼働のトップバッターとして規制委が9月10日、川内原発1・2号機への新規制基準への合格通知(審査書)を与えて以降、形ばかりの避難計画説明会と、新規制基準適合審査結果の住民説明会を開催してきた。
また10月20日には、原発立地・川内市議会が再稼働の陳情を採択、市長も同意した。それらを受け、最後の手続きとなる鹿児島県議会と県知事の判断が、11月5日から7日までの臨時県議会で示されることとなった。
再稼働に向けた動きが粛々と進んでいるように見えるが、実は最も危機感を募らせているのが推進の立場に立つ知事と県議会与党の自民党である。それは10月24日に、自民党本部に対し「原発反対派の声一色で、県議会は孤立無援だ」と上京して泣きついた池畑県議会議長の言動に象徴されている。
こうした議長や知事らの要請で、宮沢経産大臣が急遽11月3日、川内原発の視察と、県知事および県議会与党との会談を行い、同日には、自民党本部の細田幹事長代行と自民党県議団との非公開の会談が、鹿児島市内で持たれた。
来春には県議会選挙が予定され、原発の安全性や避難計画、事故が起きた場合の責任問題など、説明責任がなおざりなまま同意を与えれば、選挙に大きく響くとの保身から、国の「お墨付き」をもらって責任逃れを図ろうとする背任行為である。
本来、12月定例議会で十分な議論をすべきところ3日間の臨時議会で結論を出そうとする拙速な行為は、再稼働の正当な理由がないので、再稼働反対の声が大きくなる前に決めてしまおうという、焦り以外のなにものでもない。
5日から始まる臨時県議会には、抗議と傍聴を含めて連日の抗議行動が展開されているが、現状の力関係では6日の特別委で再稼働関連の陳情の審査と採決が、そして7日の本会議で委員長報告と陳情に対する討論・採決が行われる見通しだ。
しかし、いったん事故が起きれば取り返しのつかない原発の稼働に反対し、廃炉を求める運動は、その目的が達成されるまではプレることなく続く。
溝口 松男(反原発・かごしまネット・本誌運営委員)
『非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟』発足
超党派の国会議員による非正規労働者の問題に取り組む議員連盟が、11月6日に発足する予定だ。名称は、『非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を考える議員連盟』、非正規労働者の待遇改善のみならず非正規雇用から正規雇用へのステップアップも視野に入れ、希望の持てる生活実現に取り組んでいくという。
今や雇用全体に占める非正規雇用の割合が40%近くにまで拡大し、とりわけ、不本意ながら非正規社員として働く者の増加と生活苦に喘ぐ「ワーキングプア層」の拡大が社会的な問題になっている。
非正規雇用労働者の多くは、低賃金かつ不安定な雇用環境の中で社会保険や各種手当だけでなく職業訓練や昇進・昇格の機会などからも排除され、正社員並みに頑張っても相応しい待遇や将来への安心を得られていない現状がある。
この問題認識を共有する超党派の議員が集まり、今回の議員連盟の結成となった。
呼びかけ人として、自民党の尾辻秀久氏、鴨下一郎氏、民主党の山井和徳氏、津田弥太郎氏など、いずれも厚生労働分野に明るい議員が中心メンバーとなっている。
「声を上げられない」「声を上げる手段を持たない」立場にある非正規雇用労働者に寄り添いながら、非正規雇用のあり方を抜本的に見直し、将来に希望のもてる生活が確保できる雇用を創り出していくなど、具体的にどんな活動を展開していけるのかの期待が大き
team rodojoho
自衛隊を小学校に呼ぶな 「リフレッシュ事業」に抗議
福島県伊達市の伊達市立保原小学校で10月25日、「子どもたちのためのリフレッシュ事業」と銘打ち、自衛隊と小中学生が「交流」する行事が行われた。
主催したのは伊達地区PTA連絡協議会で、伊達市・桑折町・国見町の教育委員会が後援。
3市町の小学生、中学生と保護者に案内状が送られた。行事の内容は、陸上自衛隊東北方面音楽隊による演奏やすいとんの炊き出しに加え、自衛隊車両の展示、試乗などだった。
自衛隊は東日本大震災や広島土砂災害の救援・復興で活躍したが、本来は戦闘部隊だ。安倍政権による「集団的自衛権の行使容認」によって、米国が海外で起こす戦争に加わるおそれも高まっている。そんな自衛隊と小中学生を交流させることが、なぜ「子どもたちのためのリフレッシュ」なのか。子どもたちには戦争のない社会こそ残すべきだろう。
全国のPTAから「震災復興のため」に集まった義援金から、こうした行事に励万円を支出するのも納得できない。
「自衛隊参加による『子どもたちのためのリフレツシュ事業』を考える住民の会」は10月21日、世界の反戦運動に連帯し、伊達市長・教育長に抗議の緊急申し入れを行った。応対の窓口になった伊達市の総務課長は「回答する必要がない」と主張。「申し入れを受理して回答しないのはおかしい。理由を明らかにせよ」と追及し、再考を迫った。
当日も会場の小学校でチラシを配布し、緊急に立ち上げた「住民の会」の活動を一区切りさせた。
佐藤 隆(自衛隊参加による「子どもたちのためのリフレッシュ事業」を考える住民の会)
日日刻刻 経団連「規制改革要望」 (10.14〜23)