937号
◎「スト辞さず、戦争への道拒む」 労働弁護団集会で9労組が決意
日本労働弁護団の呼びかけによる安保法制と労働組合・労働運動を考える集会が5月24日、東京の連合会館で開かれ、300人以上の労組員、市民が参加した。
田端博邦東大名誉教授が「戦争法と労働運動」をテーマに基調講演。
ナチス・ドイツでの緊急事態宣言から労働組合解散までの流れを説明し、自民党改憲案にある緊急事態条項で基本的人権が制限される危険性を指摘した。
9つの労組が決意を表明。
全国港湾の松本耕三副委員長は「米国は戦争をし続ける国だ。そこと集団的自衛権の関係を持つ危険性を考えるべきだ」と港湾労働者としての危機感を訴えた。
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の新崎盛吾議長(新聞労連委員長)は、安保法制と対をなす秘密保護法により「記者への影響も出ているが、取材を受ける側の萎縮が進み情報が出てこなくなっている」と情報統制≠ニも言える状況の進行を明かした。
全日建連帯の小谷野毅書記長は「安保法制では全国の仲間が2時間のストで体を張って闘った。ナショナルセンターの枠を越え行動に立ち上がろう」と訴えた。
国労の唐澤武臣書記長は、ベトナム戦争の際の米軍の燃料輸送阻止闘争にもふれ「ストのできる組合として組合員の団結を図り、戦争法には断固反対の行動を取る」と表明。
航空労組連の和波宏明事務局次長は「航空機は周辺事態法で指定公共機関とされ、兵員や物資の輸送をさせられる。われわれはスト権を立ててそれを拒否している」と語った。
医労連の三浦宜子書記長は「先の戦争では日赤だけで3万人を越える看護師が従軍など戦争に動員された。医療労働と戦争は真っ向から対立する。戦争に協力しない労使共同宣言を結ぶなどの闘いを広げていく」。
神奈川県高教組の成田恭子副委員長は「安保法の地方公聴会が神奈川で開かれた際には身を呈して阻止行動に取り組んだ。教え子を再び戦場に送らないために、経済的徴兵制に対する闘いも取り組んでいく」と表明した。
全駐労の紺谷智弘書記長は「私たちは国と雇用契約を結び、米軍で働いているいわば『国による派遣労働者』。安保法制で紛争地に派遣されるリスクが高まった。労働は売っても命は売らない」。
最後に国交省労組の河和宏副委員長が「緊急事態には全国の空港は自衛隊の指揮下に置かれ、指定公共機関として戦争に動員される。国民の命と財産を守るため、安保法制に反対する」と決意を語った。
新聞労連には「戦争のために二度とペンをカメラをとらない 輪転機を回さない」とのスローガンがあり、多くの労組が戦争を拒否する誓いを持っている。私たちの先輩が戦争の経験を踏まえ、「平和の中で働く」願いを込めたものだ。その思いを今、どう引き継ぐのかが問われている。
東海林 智(team rodojoho)
◎東北大が非正規3200人雇い止め 背景に「5年無期転換」逃れの思惑
この春、当組合にとんでもない話が舞い込んできた。東北大学で非正規教職員3200人の大部分を突然、18年3月31日から雇い止めにするというのだ。
東北大学では現在、およそ3640人の非正規教職員が働いている。そのうち国立大学が法人化以前から雇用されていた399人を除く3243人(准職員1493人、時間雇用職員1750人)に、就業規則の一方的改定により5年の更新上限をかけ、しかもその始期を3年前までさかのぼらせ、2年後の18年3月31日から雇い止めにしていくと公表したのである。
今年3月、大学で説明会が開催され、(1)法人化以前からの雇用上限の無い非正規教職員399人については引き続き上限無しとし、(2)法人化後の3243人は、「13年4月1日から通算5年で原則雇い止めにする」と通告した。(3)例外として、部局推薦で「無期転換候補者」となる場合があり、その基準は「現在各部署に配置されている事務一般職員に替わり同程度の職務を担当させた際に、これと同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれる者」としている。
問題点は、まず5年上限の根拠である。
政府の国会答弁(2012年7月25日衆議院厚労委員会)によれば、改正労働契約法第18条は「雇用の安定を図るという趣旨で設けたもの」(金子労働基準局長)であり、「5年のところで雇い止めが起きてしまうと、この狙いとは全く相いれないことになってしまいます」とされている。
東北大学の就業規則は、まさに「5年のところで雇い止め」にして「雇用期間が無期転換の時期を迎える前に雇い止めをする」ものであり「改正法の趣旨と相いれない」。
以前は明確な上限がなかったのに、後出しで厳格な「一律5年上限」をさかのぼってカウントするのは、一方的な不利益変更であるだけでなく、不利益変更の遡及となり、違法でもある。
東北大学のホームページには、「東北大学は、被災地域の中心にある総合大学として、復興に全力を傾けていく歴史的使命があります」と書かれている。この時期に、非正規雇用者3200人を雇い止めすることが、復興支援と相いれないことは明らかだろう。
法人化されても国立大学である以上、公的機関としてのコンプライアンスと復興支援に責任を負う存在であることは、今さら確認するまでもない。
当組合は現在団体交渉を申し入れており、団交の場で説明を求めていく。
松村 比奈子(松村比奈子 首都圏大学非常勤講師組合委員長)