たたかいの現場から

977号

東京特別区 > 実力行使構え「マイナス勧告」見送らせる

 特別区の2018年賃金確定闘争は、特別区人事員会勧告制度が始まって以来、最大にして最悪の引き下げ勧告を実施させないという、今だかつて経験したことのない厳しい闘いとなった。

 

 10月10日に出された勧告は、春闘における民間の賃上げ状況や国、多くの県・政令市の引上げ勧告に対し、月例給について平均2.46%、額にして平均9617円という過去最大の引下げで、特別区職員の生活を脅かす理不尽極まりないものであった。
 こうした公民較差が算定された最大の要因は、昨年の行政系人事・給与制度の見直しに伴う職員構成比の変化にある。

 

 30年ぶりの制度見直しは、旧給料表の上位職級から新給料表の下位職級に切り替わる職員を大量に生じさせた。約2100名の主任主事が係員に切り替わったため、1級構成比が5%も上昇する結果となった。
 こうした職員構成比の変化を踏まえた公民比較を行うべきであったにもかかわらず、その対応を怠った区長会と委員会が作り出したマイナス勧告であった。

 

 勧告は職場でも衝撃を持って受け止められ、勧告当日、直ちに闘争委員会を開催し、勧告を実施させないことを今賃金確定闘争の最重点要求とすることを確認。委員会への抗議行動、署名の取り組み、抗議集会の実施、区長会への抗議座り込み等、組織の総力を挙げて行動を展開。
 交渉では勧告の不当性を訴え続けた。

 

 11月22日、始業時から1時間の実力行使を配置し、勧告見送りを決断するよう区長会に迫ったが、厳しい情勢に変わりはなく、20数年もストを実施していない不安とも相まって職場も緊張感に包まれた。
 交渉の進展が見られない中、最終交渉日の深夜、交渉責任者である副区長会正副会長から話し合いの申し入れがあり、その席で「勧告実施を見送る」ことが告げられた。労働組合の要求で勧告が見送られた歴史的な瞬間であった。

 

 労働運動の冬の時代と言われる今、組合員の総力を結集した闘いで、労働組合の存在感を示すことができた。

 

染 裕之(東京清掃労働組合中央執行委員長)

 

労契法20条裁判 > 初審を上回る全員勝訴 均等待遇へ重要な前進

 12月13日、郵政産業労働者ユニオンに加入する郵政の非正規労働者が日本郵便を訴えた労契法20条(東日本)裁判の東京高裁判決が出された。

 初審での手当等の格差を違法とした画期的な判断がどうなるのか注目される中、白石史子裁判長は初審から更に踏み込み、病気休暇中の損害賠償を認め、住居手当と年末年始勤務手当10割支給を含む全員勝訴の判決を言い渡した。
 損害賠償額は167万円となった。

 

 判決公判には41名の傍聴席を求めて100名以上が並び裁判所前は活気に溢れた。14時に判決が出され傍聴者が地裁を出てくると拳を握りしめてガッツする姿が遠目に判り、勝訴を確信した。原告らが掲げた旗には「全員勝訴」「前判決より前進」の文字。裁判所前を埋めた支援者からは大きな歓声が挙がった。

 

 原告の一人浅川喜義さんは判決後の裁判所前で「休暇を取った際の賠償にも踏み込んだ大阪判決を超える内容だ。全国でこの闘いを支えてくれた仲間にお礼を言いたい。全国の非正規で働く仲間に伝えていきたい。内容的には西日本判決や6月のハマキョウレックスの判決もあったので当然だと思う。しかし業績配分の基本的考え方で支払われる賞与については触れられておらず残念だ。ここは最高裁で判断を求めることになると思う」と語った。

 

 郵政ユニオンの日巻直映委員長は「非正規差別をなくしていく闘いを確かなものにしていく為にも、労契法20条裁判の闘いを大きく前進させて行きたい。年明けの1月24日には西日本の大阪高裁の判決も出る(13時15分。82号法廷)。引き続きご支援を」と力強く語った。
 組合によれば、日本郵便は当該原告に対し賠償額を支払いたいとの意向があるようである。

(編集部)

 

保険募集人 > 基本給が「借金」!? 業界の闇に切り込む

 「保険営業『基本給』は貸付金」という見出しで、18年11月25日付「毎日新聞」社会面トップで報道された保険代理店社員(保険募集人)の問題で、ユニオン北九州は17年から、団体交渉と裁判に取り組んできた。
 この記事以降、同様の裁判の取り組みの存在や、新たな相談が寄せられ、全国的な「保険業界の闇」ともいうべき実態が、保険募集人として働く「労働者」たちを苦しめている。弁護士たちの間でも被害弁護団をつくろうとする動きもある。各地の合同労組・ユニオンに駆け込む可能性もあり、労働組合側の問題意識も必要とされていく。

 

 最低賃金の基本給が「補給」という名目で貸し付けた形にされ、歩合給の高い時にはそれが引かれる。本来、提供されるべき見込み客の情報を、高額で買わされるなどの結果、収入ゼロが何ヵ月も続くなかで苦しんできた保険代理店「RKコンサルティング」(本社千葉県)の「募集人」労働者は、組合に加入し17年初頭から団体交渉に取り組んできた。

 会社は、管理監督をしていないとして残業賃金も拒否、また最低賃金の基本給金額の引き去りに対しての返還も拒否するなど全ての要求を拒否してきた経過の中で、18年4月から裁判闘争を開始した。

 

 金融庁は14年、保険代理店に対し「営業マン」の雇用を求める監督指針を打ち出したことで、業務委託から雇用契約に変える事態となった。ところが実態は混乱し、基本給を貸付、搾取するなどによって、成績によって雇用契約の義務を果たさない代理店が横行している。金融庁の指導の中途半端さが原因ともなっている感もある。
 ほかにも相談があり、所属する代理店をやめる際の顧客の移管問題や、そうした問題の派生からコンプライアンス指導と称して監禁的な内勤を強いているような実態もある。移管にからめて在職時の基本給返還を労働者に要求する会社もある。

 

 業務委託と雇用契約の間で翻弄される「保険募集人」労働者の苦しい現状に少しでもメスを入れて行きたい。

本村 真(ユニオン北九州委員長)

 

科研雇い止め > 労基署のアドバイスが問題に

 有期雇用労働者の雇用更新において、会社側が「今回で最後」という不更新条項を契約書に入れてくることは珍しいことではない。
 現在静岡地裁でたたかわれている科研製薬の解雇事件も20回以上の半年更新で10年以上働いた女性が17年7月、18年3月末で更新しないという契約書を示され、提出しないでいたところ「提出は業務命令」等と会社から言われ、労働基準監督署や県民生活センターに相談に行ったところ、「契約書を出さなければ10月以降の雇用が無くなるから出しなさい」というアドバイスをされてしまい、署名・押印のうえに契約書を提出してしまいました。

 

 しかし今年10月、河合塾の不更新条項をめぐり、福岡労働局は労働契約法19条の期待権を認めるべきとした「助言」と比べると正反対のミスリードです。
 裁判になると会社側はこの契約書を証拠のトップに提出し、「解雇に合意していた」と主張してきました。
 静岡県共闘やユニオンネットで行っている静岡労働局交渉でも12月5日の交渉でこの問題をぶつけましたが、労働局は「個別の問題には答えない」というお役所回答だった。

望月 吉春(焼津地域労組望月吉春)

 

関生弾圧 > ストがなぜ罪なのか 広がる抗議の輪

 18年12月8日、大阪市立中央区民センターで「労働組合つぶしの大弾圧を許さない12.8集会」が開かれ、600名余が参加した。この集会は、この間、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部に対する警察権力による異常なまでの不当弾圧が行われ、8月から11月にかけて違法捜査や組合員など延べ40名の不当逮捕が繰り返されるなかで取り組まれた。

 

 冒頭、主催者あいさつに立った樋口実行委員会委員長は、「出身の全港湾大阪支部も過去港湾年金制度実現に向けて産別ストを行ったことがあった。その時は全国の全ての港で働く労働者が対象となる『年金制度』の実現をめざし、直接労使関係のない企業にも呼びかけストを敢行。その時に大阪支部の役員も威力業務妨害容疑で逮捕されたが、5年間の裁判を経て組合の主張が認められ罰金刑に終わったことがあった。今回もバラセメント輸送運賃や生コン輸送運賃の引き上げを求めて昨年12月12日からゼネストを行ったことが罪になるなら、憲法28条で保障された労働組合の権利(団結権・団体交渉権・団体行動権)を奪うものであり、黙って見過ごすわけにはいかない。全世界から関西地区生コン支部に掛けられた不当弾圧に抗議の声が寄せられている。皆さんの力で弾圧をはね返そう」と決意を述べられた。

 

 次に関西地区生コン支部・坂田副委員長から、この間の権力弾圧の経過を紹介したDVDを上映して報告した。

 いま、関西地区生コン支部に仕掛けられた組合つぶしの攻撃は常軌を逸している、関西労組連合会から逃亡した連合交通労連生コン産労や建交労関西支部とUAゼンセンは、大阪広域生コン協組にすり寄り、瀬戸博幸ら差別排外主義者とも連携して組合つぶしを行っている。今回の家宅捜査で90ヵ所、動員された警察官千名を超え、逮捕者延べ40人に及び、起訴された組合員10数名という異常さを示している。

 

 54年の歴史を積み重ねて、セメント・生コン産業の中でその地位を築き、大手セメントやゼネコン主導型の業界を生コン中小企業の経営安定を図るため労組が協力・協同の産業政策運動を進め現在の安定を図ってきた時に必ず権力弾圧が起こる。

 私たちは歴史に学び権力弾圧に屈せず勝利まで闘うと決意表明を行った。

 

 大阪労働者弁護団・森博行代表幹事からは、関生弁護団を20名余りで構成し、権力弾圧に対してあらゆる法的な手続きを行い組合員の早期釈放を勝ち取るため奮闘している。
今年1月には、大阪広域生コン協組が連帯系企業に圧力を掛け、組合と話しをするな、組合員を呼び出し脱退強要するなど不当労働行為の数々を行ってきた。これに対抗して組合勝利の仮処分が出され、さすがの広域生コン協組もこれに従わざるを得なかった。彼らの不当性は、明らかだ。今後も不当弾圧に対して弁護団として最大の支援を行うと言われた。

 

 小田弁護士からは、武委員長が大阪地裁で述べた陳述書を紹介され、万雷の拍手で応えた。
 川口真由美さんのミニコンサートのあと、9名の方から連帯アッピールを頂き、最後に集会決議文を小林実行委員会事務局から朗読し、参加者全員で承認し、全交の山川さんの団結ガンバローで集会は終わった。

柿沼 陽輔(全日本建設運輸連帯労働組合書記長)

 

原発関連資料紹介

◎  「木質バイオマス発電について考える」

 

 放射能汚染木材を燃料として使う「木質バイ オマス発電所」の計画が福島県田村市で進めら れている。

 住民への説明を変え、燃やさないと していた放射能汚染のひどい樹皮も燃料として 使うという事に大越町の住民が怒り、反対運動 を始めた。

 このたび「大越町バイオマス発電に 反対する市民の会」がこのバイオマス発電計画 について様々な面から資料をまとめ冊子にし た。放射能汚染木材を使うことの問題点を技術 的な観点からもよくわかるようまとめてある。

 

 連絡先:ちくりん舎(NPO法人市民放射能監視センター)、電話042-519-9378 労働情報でも取り扱っています。カンパ500円

 

 

◎  「企業の被曝対策責任を追及 あぜんとする環境省焼却事業の実態」

 

 福島県飯舘村蕨平に作られた放射能汚染ゴミの仮説焼却場で働いた一労働者が焼却灰を取り扱う作業に従事し、その労働環境のひどさから働き続けることが出来なくなり雇用主に損害賠償請求の労働審判を申し立てた。

 紹介するパンフレットはこの闘いを支援する全国一般全国協議会ふくしま連帯労組、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会等が中心となってまとめたもので、仮説焼却場の実態を詳しく伝えている。

 今、福島で何が行われているのかの一端を知る上でも参考になる。

 

資料請求先:全国一般全国協議会ふくしま連帯労組または労働情報(03-6806-0375)まで。資料代300円

 

 

 

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