たたかいの現場から
832号

尼崎事故、JR西・前社長に無罪判決
遺族と連帯して安全問題の追及を

 1月11日、業務上過失致死傷罪に問われていたJR西日本前社長山崎正夫(事故当時安全対策部長)に対する無罪判決が神戸地裁であった。
 この裁判の論点は、「本件カーブを個別に指定し、列車自動停止装置(ATS)をするよう指示すべき注意義務があったのに、これを怠ったという過失があったかどうか」(判決要旨)。神戸地裁は被告山崎の、危険性の認識、注意義務、結果回避義務違反についても免罪し、被告人に「無罪」を適用した。
 しかし、半径300メートル以下のカーブはほとんどローカル線で、本件現場のように直前まで転覆限界速度の時速120キロで走行している区間は他には北陸線の一ヵ所だけである。その上巨額の費用をかけて半径を半分にする付け替え工事を行ったのである。また97年東西線開通時のダイヤ改正では、一日110〜200本の増発を行っており、多くの運転士は転覆の危険性を感じていた。
 判決文の「危険性を高めたものとは認められない」とは何を指しているのか。さらに函館線事故はATSがあれば防げたとして「安全対策会議」にも報告されていたことが公判で明らかになっている。事故当時、ATS設置義務の法令がなくても、JR西はJR他社や大手私鉄などと同じく、安全対策を講ずることは常識である。また事故の直接的な背景であるJR西の懲罰的な「日勤教育」について判断をしなかったことも事故原因と責任を解明する上で決定的な欠陥である。
 JR西の経営陣の責任を免罪した今回の地裁判決は、遺族の気持ちを逆なでした。この判決を法廷で聞いた遺族の藤崎さんは「無罪にするにはあまりにも大きな事故、大きな犠牲、大きな偽証だ。JRの口裏合わせを鵜呑みした認定。真実に目をつむり一方的に過失がないと認定した判決だ。口裏合わせで偽証し、無罪が得られる例になることを恐れる」と語った。遺族らは「責任は誰が取るのか、無罪のままでは終われない」と控訴を訴えている。
 3月からはJR西・元三社長の公判が始まる。JR西に対する遺族・被害者の責任追及は止まらない。遺族の闘いに連帯する、JR現場の安全問題を追及する闘いと、それを求める私たちの闘いがもっと広がっていかねばならない。私たちは今年も4月21日に現地尼崎で「ノモアー尼崎事故!命と安全を守る集い」の開催を予定している。
 ……JRに安全と人権を!株主・市民の会 桐生隆文

JRに安全と人権を!株主・市民の会 桐生隆文

職務命令合憲の揺り戻しか?
処分に基準「日の丸・君が代」

 2012年1月16日の最高裁判所。この日、「日の丸・君が代」に関する3件の最高裁判決があった(全て第一小法廷)。3件ともに都教委の発出した「10・23通達」に関連した処分事件で、処分撤回を争う事件である。「日の丸・君が代」関連訴訟の最高裁判決は、昨年5月末より7月までの間に9件の判決が出され、憲法問題として「通達」と、それに基づく「職務命令」が合憲であり、「憲法19条を侵害しない」判決が出されていた。その内容はきわめて不当であり、憲法を形骸化するものであった。このために、弁護士会や学会など多方面から批判が続出していた。そして、一連の不当な判決が、大阪の橋下市長(前知事)のファッショ的政策に影響を与えることとなった。今回の、最高裁判決は、本質的な憲法問題ではなく裁量権の問題で判示したのであるが、大きく右に傾いた振り子を少し揺り戻して、帳尻を合わせたかのような見せかけを作り出す役割を果たす判決であった。
 判決は、減給・停職等の懲戒処分を「取消す」とするもので、「戒告」を軽微な処分として裁量権の範囲内とするものの、それ以上の処分を違法とした。本件では、停職1ヵ月のKさんと減給のWさんについて処分を取消すよう判示した。しかし、停職3ヵ月のNさんについては処分相当を判示した。これは、Nさんが「日の丸を引き下ろした」り、再発防止研修で混乱させた処分歴があるからだとするものだ。つまり、卒入学式の会場の「秩序の維持」が優先され、これに抵触しないことを前提に加重処分を「違法」としたのがこの判決であるといってよい。
 裁量権についての判例は、1977年の神戸税関事件があった。この判例は、処分権者の裁量を大幅に認めた内容で、その詳細を定めた判例はなかった。今回の最高裁判決は、この裁量権に一定の基準を設定した点に特徴がある。処分による不利益の度合いと秩序維持や処分前後の状況等との権衡によって判断すべき、とするものだ。
 本判決では一つの反対意見と二つの補足意見が出された。そのうちの桜井補足意見は、多数意見の趣旨を代弁するものとなっているが、そこでは不起立と処分が繰り返される教育現場の混乱に対して「一日も早く解消し」と判示され、暗に都教委の側にその改善を迫る内容となっている。つまり、都教委へ職務命令と処分の連鎖の改善を提案する内容となっている点に、注目する必要がある。
 宮川反対意見は、「戒告」処分も取り消すべきであることを示し、現場教員には教育の自由が認められるべきであることを強調しており、1976年の旭川学テ最高裁大法廷判決に基づいた意見を示している。司法の良心を示した点で正しい判断の意見であるといえる。
 この最高裁判決に対して、都教委の担当者は毎日新聞に「これまでと変わりがない」と述べている。また大阪では3回で分限免職の「教育基本条例」の一部を修正する旨マスコミに述べているが、減給や停職を残す旨を示している。このように見ると、最高裁判決はすでに絶対的な存在ではなくなっている。この判決を履行させることが新たな闘いにさえなりかねない情勢となっている。これは、司法が権力に迎合した判決を出してきた帰結であり、司法の危機をも迎えているのである。

「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会共同代表 永井栄俊

震災解雇 仙台地裁で全面勝利和解
解雇取消し=バックペイ=職場復帰を闘い取る!

 仙台市の技術開発会社の社員三国健さんが震災からしばらくして「社員としてのスキルが不足している」という抽象的理由で解雇予告を受けた。3月、三国さんは自宅近くにある避難所でボランティア活動をおこなった後、4月からの本格的再開に向けて懸命に準備を行っていた。
 三国さんは、業務成績が悪いわけでなく、無遅刻無欠勤で3年間働き続けており、震災による業績悪化を予想した会社が、三国さんを解雇したのは明らかだろう。  三国さんが解雇通告を受けた頃、県内の事業所では「解雇当たり前」の風潮が生み出されていた。非正規は次々解雇され、正規の解雇もあらゆる業種で進行した。そして津波で壊滅した沿岸部では漁業従事者が船と養殖場を失い、農業従事者が水田を塩水・ヘドロ・瓦礫で覆われて呆然としていた。
 「職を失っては一家の生活がない、なんとしても職場に戻る」。決意した三国さんは、宮城合同労組に加入して会社に団体交渉を申し入れた。しかし会社は解雇撤回要求に応ぜず、6月仙台地裁に解雇無効の訴え(本訴)を起こした。そもそも明確な理由がない本件解雇裁判は、終始三国さんに有利に展開した。そして裁判所は今年2月に証人尋問の日程を入れたのと併せて和解を勧告。会社側の和解案は金銭解決だったが、これを拒絶しあくまで職場復帰を迫り実現した。
 誰しも心が凍りついていた昨年4月に、追い討ちをかけた解雇。全国の仲間の激励でかちえた勝利である。本当に感謝申し上げます。
 震災から10ヵ月が経過し、休止していた事業所も少しずつ生産を再開しつつある。職場を守る労働者の熱意と中小事業主の懸命な努力で、困難を乗り越え地域の雇用確保をしてきた。
 反面、多賀城市全体の雇用者6千人中1千500人を雇用するソニー多賀城工場は、被災した建物(保険金103億円がおりている)の復旧もせずに、期間工を容赦なく切り捨て、地元の正規社員には退職強要に等しい広域配転を突きつけている。これが中鉢副社長を復興構想会議に財界代表として送り込んでいるソニーのやり口である。
 震災後、県内では休職者が昨年の2倍となり、雇用情勢の改善なしに地域再建はありえない。便乗解雇を許さず、生活を守るため共に闘いましょう。

全国一般全国協議会宮城合同労働組合 星野憲太郎

新たな課題も確認しあった旗開き

 三里塚芝山連合空港反対同盟(世話人・柳川秀夫)は、1月15日、2012年反対同盟旗開きを横堀農業研修センターで行い、30人が参加した。
 旗開きは山崎宏さん(横堀地区・労活評現闘)の司会で始まり、「昨日、成田空港から南スーダンPKO派兵のために陸上自衛隊先遣隊が出兵した。成田空港の軍事利用を許さない」と強調した。
 柳川秀夫さんは、「空港会社は、あいかわらず空港機能を拡張しようとしている。闘いは延々と続く。三里塚の各場所を放射能測定したがどこも高い値が測定された。放射能問題も大きく取り上げていかなければならない。三里塚闘争の課題が明確になった。闘いを次の時代に繋げるために奮闘していこう」と挨拶した。
 平野靖識さん(東峰地区・らっきょう工場)は、「原発事故放射線被害の影響で有機農業が台無しにされた。脱原発を三里塚の地からも訴えていかなければならない。木の根ペンションで消費するエネルギーを自給していくために連結型太陽光発電を建設する」と発言。
 清井礼司弁護士は、「横堀・団結小屋破壊裁判控訴審・第一回公判(2月15日、東京高裁)を出発点に一坪共有地裁判が始まる。控訴審闘争勝利にむけてスクラムを強化していこう」と呼びかけた。
 支援の発言が続き、最後に団結がんばろうを行った。

三里塚空港に反対する 連絡会 山下一夫

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