912号
◎取り戻そう☆生活時間と安定雇用 潮流こえ2500人が結集
政府が進めるホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ制度)導入など労働時間規制緩和や労働者派遣法改悪に反対する集会が5月14日夜、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた。
会場には連合から全労連、全労協や中立系など潮流を越えた労働組合・地域ユニオン、反貧困ネットワークなど幅広い市民団体も参加、人間らしい生活を守るための声を上げた。参加者は2500人。
集会は「取り戻そう☆生活時間と安定雇用〜許すな雇用破壊〜」と銘打ち、日本労働弁護団や過労死、ブラック企業問題に取り組むグループなどが企画した。
雇用や働き方を巡る集会で「生活時間」がメインに取り上げられることは珍しく、多様な立場の人々が集った。
マタニティ・ハラスメント問題に取り組む圷(あくつ)由美子弁護士は「残業代ゼロ制で困るのは働く人だけではない。家族との生活時間も奪われ家事・育児は全部女性が担わなければならなくなる。もちろん睡眠時間も奪われ命も危機にさらされる。社会全体の問題になる」と生活時間の視点を強調。
全国過労死を考える家族の会の寺西笑子会長は「残業代ゼロ制度は過労死防止法に逆行するものだ。残業代ゼロより過労死ゼロを。改正を許さず、命が守られる社会を」と訴えた。
第一次安倍政権下で残業代ゼロ制度が画策された際にも、過労死家族らが命の問題を訴え、制度化を止める大きな原動力になったが、今回は過労死防止を国の責任とする防止法を作りながらの提案だけに、遺族たちの怒りはよりいっそう高まっている。
呼びかけに応え、潮流をこえて労働組合が一同に会し、ブラック企業対策プロジェクトなど多様な団体が、労働法制の規制緩和に反対の声を上げた意義は大きい。
「生活時間を奪われる」という視点が確実に運動の広がりを呼んでいる。
連合傘下の男性組合員(42)は「全国から立場を超えこれだけの人が集まったのに励まされた。きっとつぶせると確信を持てた」と上気した顔で話していた。
team rodojoho
◎「大阪都構想」住民投票で否決 労組攻撃急先鋒の橋下氏政界引退へ
大阪市を廃止・分割しようという大阪都構想の是非を問う「特別区設置住民投票」(5月17日実施)は反対が上回り、都構想は否決された。
橋下徹・大阪市長が立ち上げた大阪維新の会の看板政策であり、市民がノーを突きつけたことで、橋下市長は市長職の任期満了後に政界を引退することを表明した。
激しい闘いだった。開票結果は接戦で市民をほぼ2分する住民投票。大阪都構想を掲げる大阪維新の会と自民、民主、公明、共産の主要政党の連合体が対決する異例の構図だ。労働者を支持層に持つ政党が反対に回ったため、多くの労働組合員も街頭宣伝などに加わった。
私自身、大阪市民であり、周囲では当初は関心が薄かったが、連日、両陣営の宣伝カーや運動員の呼びかけが濃密に行われ、期日前投票、当日投票とも高い投票率となった。
投票所に行くと通常の選挙では見られない姿があった。大阪維新の会の運動員が出入り口で「投票で賛成を」と書かれたのぼりを持って、有権者に賛成するよう呼びかけていた。
大阪都構想では雇用や労働の変革については触れられていない。雇用を左右する経済施策も道路や鉄道のインフラ整備、カジノ誘致など、およそ前近代的で、反社会的な施策を打ち出していた。
一部の人たちだけが潤うような政治など許すわけにはいかない。
橋下氏は府知事、市長を通じて反労働組合の急先鋒だった。組合活動についてのアンケート調査は労組側が団結権や思想・信条の自由を侵すとして提訴し、違法性が認定された。執拗な労組攻撃が司法の場で戒められても涼しい顔をしていた。
残された任期で労組とどう対峙するか不明だが、司法判断を謙虚に受け止め適正な対応を取るべきだ。
投票を見ると依然として橋下人気が高いことが伺える。それに奢ることなく「立つ鳥跡を濁さず」任期を全うして頂きたい。
山本 ケイ(フリーライター)
◎「派遣に一生縛らないで」 民主党ヒアリングで当事者訴え
「当事者の実態も知らずに、また、私たちの声を一切聞かずに作られた派遣法改正案には大きな問題があります」
労働者派遣法が実に3度目の審議入りした5月12日午前、東京・渋谷区の労組事務所に30代から50代までの男女6人の派遣労働者が集まった。相対したのは民主党の岡田克也代表ら同党の国会議員たち。
労働者は口々に派遣労働の不安定な実態、差別的な実態などを訴えた。みな仕事がある時だけ契約を結んで働く登録型派遣で働く人たちだ。
派遣労働者と岡田代表との懇談会を企画し、この日にぶつけたのは、日本労働弁護団や派遣労働ネットワークなど。冒頭の派遣労働者の発言にあるように、派遣法改正案は当事者の声を聞かずに練られた。
しかし、もう一方の当事者である派遣会社の意見は十分過ぎるほど反映されている。その舞台となったのが、改正案を検討した労働政策審議会だ。労働者、使用者、公益の三者で構成される審議会だが、使用者側のオブザーバーとして派遣会社の役員2人が参加、「しゃべり過ぎだ」と労働側委員からクレームが付くほど、自らの主張を繰り返した。
改正によって大きな利益≠得るかも知れない利害当事者が訴える改正の主張にどれだけ信用性があるのか、通常では考えられない状況だった。
厚労省は「派遣は複雑で事情を良く知る立場で参加してもらった」としれっと言うが、それならば、労働の当事者の意見も聞くべきだ。懇談はそんな思いもぶつける場になった。
30代と40代の女性はセクハラ被害を訴えた。
「子どもの作り方教えてやろうか」。職場でそんな言葉の被害に遭い、心を病んだ。だが、派遣会社に訴えても対処してくれない。セクハラ当事者は処分されず、派遣労働者が解雇されることもあるという。
40代の女性は、「解雇で社内にセクハラはなかったことになる。セクハラ・パワハラは立場の弱い派遣労働者が狙われる。そんな派遣に一生縛りつけるような改正は許せない」と訴えた。
30代の男性は大手カメラ会社でレンズを作る難度の高い仕事を5年間続けた。正社員になりたいとの思いで残業もこなし、新入正社員に教育するほどの技能を持っていた。しかし、減産を理由に雇い止め。
男性は「派遣は現代の奴隷法。不安定で低賃金では女性とつきあうこともできない。人権問題です」と批判した。
50代の女性も15年派遣で働き、自腹で資格を取っても正社員登用を拒否された。女性は、「私はモノではない。働く者を商取引で扱う派遣法は抜本的な見直しが必要だ」と断じた。
政府が主張する改正案でのステップアップや正社員登用などの効果≠派遣労働者たちは期待も信用もしていないのが良く分かる。広がる派遣の間口に、派遣から抜け出せない恐怖が先に立つ。
「一体、何のための改正か」。常套句ではあるが、改めて叫びたくなる。
派遣法改悪の先には安定した仕事となり喜ぶ労働者の顔を思い浮かべることはできない。何度でも潰して思い知らさなければならない。
東海林 智(team rodojoho)
◎戦争関連11法案に危機感 女性たち、政権にレッドカード
“戦争法”をなんとしてもつぶしていく、安倍政権にレッドカードを―というスローガンのもと女性を中心に800人以上の市民が5月14日、都内・銀座の公園に集まった。
参加者は赤いスカーフやTシャツなどを身につけ、「積極的に平和を壊すな」「戦争はさせない。集団的自衛権反対」などとシュプレヒコールをあげながら銀座を練り歩いた。
三鷹市からひとりで参加していた花上香世子さん(72)は、原発災害からはじめて政治に対して声をあげるようになったと言い、安倍政権下で推し進められる“戦争法案”にも反対するため連日国会前行動などに足を運ぶ。
「日本はいま、民主主義の危機に直面している。自分が動かなくては民主主義は守れない。みんなで政治に関心を持たなければ」と話した。
家族で買い物を楽しんでいた女性は、赤いパレードが通過するのを見て「子どもがいるので心配」だと吐露する一方、安倍政権による国民への説明不足を指摘し、「9条改憲で何が起きるのか怖ろしい」と語った。
レッドアクションの呼びかけ人でもあるアジア太平洋資料センターの内田聖子事務局長は、「これほどひどい政権はいままでにない。安倍政権がやろうとしているのはまさに現代版の富国強兵制度だ。イシューを超えてつながろう」と呼びかけた。
この日、安倍内閣は安全保障に関連する11の法案を閣議決定した。
松元 千枝(team rodojoho)
日日刻刻 物価高、収入減、消費減 (4.20〜5.12)