たたかいの現場から
801号

人によりそう介護のために 特養エルピス不当解雇撤回裁判を支援する集い

 9月25日、福島県須賀川市の須賀川アリーナで、今年3月に特別養護老人ホーム「エルピス」を運営する社会福祉法人篤心会から不当に雇止め解雇された関根たつ子さんの職場復帰を支援する集会が開催された。
 総合司会をパナソニック電工裁判元原告の佐藤昌子さんが務め、職場復帰を実現した自らの体験を踏まえて、「人をモノのように使い捨てることは許されない。手を携えて闘えば絶対に勝てる」と開会あいさつした。
 経過報告をふくしま連帯ユニオンの佐藤書記長が行い、弁護士の斎藤正俊さんから裁判における争点が報告された。「これは不当解雇撤回を求める裁判であると同時に、介護のあり方を問う裁判でもある。経営者は効率追求のための画一的介護で入居者の尊厳を傷つけているのではないか。社会的問題として運動と共に裁判を進めたい」と提起。そして原告関根さんが闘う決意を表明し、参加者へのお礼と支援要請を行った。
 村岡福祉医療総合研究所所長の村岡寛(ゆたか)さんは講演で、関根さんの闘いの課題を(1)介護労働者の苛酷な就労実態を広く市民に知ってもらう(2)介護保険制度の見直しの現状について理解を深める機会とする(3)福祉施設や介護保険事業所の経営者に「働きやすい職場づくり」を求めていく(4)介護現場で働く労働者同士の連携を深め、労働条件の改善を提言できる力を培うの4点に整理した。
 バネルディスカッションは、NPOいわき自立生活支援センター理事長の長谷川秀雄さんをコーディネーターに、介護施設入居者家族やケアマネージャーから発言。薬漬けや収益重視の実態報告や、人間らしい介護のためには介護労働環境改善が不可欠との指摘も。年間30%もの退職者を生む異常な介護職場の改革は、まったなしに迫られていると痛感するものとなった。
 幅広い方々からの連帯挨拶の後、原告の友人・須田さんから支援組織の結成が呼び掛けられ、満場一致で承認した。
 支援する集いは100名を超える参加者となった。支援の輪を広げ、介護を受ける高齢者と介護労働者の人権と尊厳を守る運動を進め、必ず勝利しよう。

 ……宗形修一(全国一般ふくしま連帯ユニオン委員長)

不払い残業代認めても「みなし労働」? 添乗員労働に矛盾した判決

 阪急交通社のツアーに添乗員を派遣している「阪急トラベルサポート」所属の添乗員で組織する全国一般東京東部労組HTS(阪急トラベルサポート)支部の組合員6名が2008年5月、「偽装みなし労働」の是非を問うために提起した過去2年分の不払い残業代請求裁判の判決が9月29日、東京地裁であった。  東京地裁民事19部村田一広裁判官は、判決主文において、被告阪急トラベルサポートに対し原告6名それぞれに不払い残業代、およびそれと同額の「付加金」(ペナルティ)の支払いを命じた。その総額は約2280万円となる。
 しかし、残業代不払いを認定しておきながら村田裁判官は、実際の添乗員の労働は、マニュアルや指示書、日報などで事細かに管理がされているにもかかわらず、「交通機関を利用した長距離の移動の際、適宜、解散(休憩)を挟むなどしている」「飛行機内において……睡眠をとっている時間がある」ことなどから、「全ての時間を労働時間として取り扱うのは相当ではなく、労働義務から解放されていると評価すべき時間も相当程度認められる」とし、この「非労働時間」を「逐一把握することは煩瑣(はんさ)」「添乗業務の内容・性質にそぐわない面も大きい」から、原告添乗員の労働は「『労働時間を算定し難いとき』に該当し……みなし制度が適用されるというべきである」として、「事業場外みなし労働」の適用を認めた。
 その上で、不払い残業代の計算方法については、「みなし労働」の時間をツアーその日、つまり「1日毎にみなす」という方法を採用する、とした。
 「不払い残業代」を認定しながらも、「偽装みなし労働」を容認するという今回の判決。組合は、「みなし労働」が認容されたという点で、不当判決と捉えている。

……菅野存(全国一般東京東部労組委員長)

マスコミ職場に物言う労組は作らせない 反リストラ産経労に不当判決

 9月30日、東京地裁527号法廷前には午後1時10分に出される反リストラ産経労・松沢弘さんの判決を聞くために大勢の傍聴者が殺到した。
 民事第19部青野洋士裁判長は入廷し無表情な顔を上げると「判決を言い渡します。主文、原告の請求をいずれも棄却する。なお、訴訟費用は原告負担とする」と読み上げ、わずか10秒そこそこで、傍聴者たちの怒号を背に浴びながら逃げるように去っていった。
 フジサンケイグループで、まともな労働組合を作ろうとした松沢さんを嫌悪した日本工業新聞社は、組合結成を妨害するため松沢さんを千葉支局長に配転させた上、1994年に懲戒解雇を行った。  今回の訴訟は、02年に東京地裁で解雇無効を勝ち取る全面勝訴をしながらも、翌03年には控訴審において「国策に反対した全動労の組合員が解雇されるのは当然」とする超ウルトラ反動判決を書いた村上敬一裁判長に逆転敗訴し、最高裁で確定した事へのリベンジだった。
 しかし、判決は(1)1994年2月の千葉支局長への配転、(2)同年9月の懲戒解雇、(3)配転の撤回などを求めた団交拒否、(4)ビラ配りへの妨害行為の4点にわたる会社の不当労働行為全てを棄却する「完全なゼロ回答」となった。  この事件は、国家権力や政財界に追随するマスコミの体質を変えるためにも負けられないが、13年間も都労委で塩漬けされるという、「団結権侵害の迅速な救済」とは相反する労働委員会制度の危機的状況の打破をも目的にしている。判決後に弁護士会館で開催された報告集会で松沢さんの「当然、控訴するつもりだが、私が死んでも子どもが闘う」決意に対して、弁護団からは「やはりしっかりした労働組合を残すことが大切だ」と強調した。

……岩崎松男(編集部)

闘う背中を見て育つ 長崎原告団闘いの記録を発行

 今年8月、「JUSTISE鉄建公団訴訟長崎原告団 闘いの記録」が、鉄建公団訴訟長崎原告団を支える会より発行された。一見シンプルな装丁ではあるが229ページに渡り発刊によせてから編集後記まで、24年間の国鉄闘争とりわけ周囲から村八分の扱いを受けた鉄建公団訴訟原告6名の葛藤と、彼らを支える支援者の熱い想いがずっしりと詰まっている。
 とりわけ家族ぐるみで闘った証しのスナップ写真には、子どもたちの心身の成長の跡がよく見てとれる。
【領価】 千円
【連絡先】(野口賢治まで)095−856−5051

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