たたかいの現場から
869+70号

〈不都合な教科書〉採択排除が拡大  教員ら「選ぶ権利は現場に」と抗議

  為政者に〈不都合な真実〉を記した教科書を採択から排除する動きが全国に飛び火するなか、抗議の声も教育現場の内外に広がり始めた。


  問題の教科書は、実教出版が発行する『高校日本史A』と『高校日本史B』。ともに、注釈に「国旗・国歌法をめぐっては、日の丸・君が代がアジアに対する侵略戦争ではたした役割とともに、思想・良心の自由、とりわけ内心の自由をどう保障するかが議論となった。
  政府はこの法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記している。

  「強制の動き」の代表格は、東京都教育委員会(都教委)による学校行事での国旗掲揚・国歌斉唱の「適正実施」と、従わなかった教職員への苛烈な人事処分だ。
  図星を指された都教委は、6月27日、この2冊の「使用は適切でない」とする「見解」を決定し、都立高校校長に伝達した。
  7月9日、今度は大阪府教委が、「この記述は一面的なものであると考えます」とする「見解」を、府立高校の校長・准校長に送った。
  さらに7月24日、神奈川県教委も、実教版を希望する28校の校長に対し、「一部記述が県教委の方針と相容れない」「(学校が選んでも)教育委員会で不採択になる可能性もあり、学校名が公になって混乱を招く」と採択中止を迫った。右翼の街宣車が来ると、現場に説明した校長もいた。


  ある都立高校教員は、「『都教委が黒といったら、白いものも黒。白と言ったら白』と校長が嘆くほど都教委の統制は確立しているが、それでも今回は『検定済み教科書まで、気に入らないと排除するのか』と、管理職にも衝撃が走った」と話す。
  高校で使う教科書は、各高校が、「うちの生徒にとってどれがいいか」という視点から選んでいる。都教委などの介入は、教育課程編成権と不可分な「教科書を選ぶ権利」を現場から奪うものでもある。

  それに対し、7月10 日には、大阪府立高等学校教職員組合(全教加盟)が府教委を批判する見解を発表。
  7月12日には、教科書の採択妨害を許さない実行委と出版労連が都庁前で緊急の抗議行動を行った。
  同26日には、神奈川県高校教職員組合(日教組加盟)が県教育長に抗議文を出した。大阪では、圧力に屈せず実教版を選んで府教委に報告した府立高校も複数ある。
  他方、自民党内には「教科書法」を制定して統制をさらに強めようという動きもあり、教科書をめぐる攻防は近年になく激しさを増している。

北 健一(ジャーナリスト)

労働者は賞味期限付き商品か!  カフェ・ベローチェの鮮度切れ雇止めを提訴

  「労働は商品ではない」とILOフィラデルフィア宣言で確認されたディーセントワークの大原則は、残念ながら現実的には未だ徹底されていない。やはり、私たちは経済的には労働力商品として扱われていて、「能力が無い」「実績を出せない」と烙印を押された労働者は、すぐに使い捨てにされている。
  労働組合として企業と闘う中で、企業が表立って「労働は商品である」と、主張することはまずない。冷徹に「より能力のある者」「企業の命令に従順な者」を見極め、それ以外の者に対して使い捨てを承知で働かせる。その際に、労働者の性別、年齢、出自などが基準になっているかもしれない。だが当然それは差別であるから、企業は否定するだろう。


  しかし、カフェ・ベローチェを経営する株式会社シャノアールは、組合との折衝の場で、さも当然のようにこう言った。
  「職場の労働者を定期的に入れ替えることが、利用者にとっても店舗に来てもらう動機になる。それを鮮度と言っています」と。
  このような発言は労働者への年齢差別、または女性労働者の多い職場事情を知っていれば、女性蔑視となる恐るべき発言だ。つまり彼らにとって、「労働は賞味期限付き商品」であったということだ。


  そもそもの発端は、現場の有期雇用労働者に対して、シャノアールは「最大4年、15回更新限度」を導入し、不利益変更を強行したことだ。これまでは3ヵ月雇用を無制限に繰り返しながら、現場の労働者は働いていた。当然期間が短く退職する労働者もいれば、数年も働いている労働者もいて、長く働く労働者は各店舗の中心的存在として働いていた。
  しかし、今年4月より施行された労働契約法の改正(有期雇用の無期化)を懸念したシャノアールは、昨年3月の段階で、「契約更新限度」の導入を試みたのだ。当時店長から「この更新制限に納得がいかないのであれば、今回で雇止め。納得するのであれば、2013年3月までの更新は保障する」という旨を通告された組合員は、長く悩んだ末に青年ユニオンへの加入を決意したのだ。


  青年ユニオンで交渉し、会社の労働者への辛辣(しんらつ)な態度に組合員は傷つきながら、今年3月、ようやく和解できるはずだった。だが、会社は調印直前に一方的に和解内容を反故にした。わずか3ヵ月の延長だけがなされ、組合員は6月に雇止めとなった。
  私たちは当事者組合員と共に、会社の改正労働契約法の脱法行為と、差別的発言を許すわけにはいかないと、7月23日に提訴した。ぜひとも、皆様にはご支援をお願いしたい。

武田 敦(首都圏青年ユニオン委員長)

日日刻刻  電機連合「原発は不可欠」 (7・8〜24)

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