926+7号
◎自治労昭和運輸で支援共闘が結成 偽装労働者供給事業での解雇に
連合系では争議も少なければ、「支援共闘」の結成も滅多にないが、15年12月13日、東京で「自治労・昭和運輸不当解雇撤回闘争支援共闘会議」が結成された(議長は宮本恒雄・元自治労都本部組織局長)。
会場の東京清掃会館地下ホールは満員で、現場の青年労働者も多数参加した。
東京23区で民間委託された清掃作業に従事する労働者の83%が非正規労働者であり、さらには労働組合による労働者供給事業が大手をふるっている。
そこでは福利厚生費等の負担を軽減させ、賃金等も低額に抑え込まれている。
昭和運輸では会社の業務部長が「環境フレッシュユニオン」の副委員長となり、労供事業に参入、数千円のピンはねや、正社員化をエサにしてのサービス残業や、文句を言えばすぐクビの桐喝管理も進めていた。
2012年、自治労昭和支部が結成されたことに対して、組合員など7名を供給労働者の枠から排除、「解雇ではなく使用停止」と強弁するに至っている。
労働組合にのみ許された労働者供給が、差別と低賃金の温床、組合つぶしの隠れ蓑にされている。そんな許し難い差別構造を打ち破るために、正規職員で組織される自治労東京清掃労組と民間委託労働者を組織する自治労公共サービス清掃労組がタッグを組んで支援共闘は結成された。
現在、解雇撤回を含めた3つの裁判が闘われているが、ある裁判の過程で和解の打診があった。しかし組合は「職場復帰でなければダメだ」と金銭解決を明確に拒否した。
会社がでっち上げたエセ労組による労働者供給事業の低賃金・ピンはね、不安定な差別構造を打破するために、そして自治労に加盟したら解雇されたという不当労働行為との闘いでもある。
集会では自治労顧問弁護団の細川潔、中野麻美弁護士が、闘いの意義について分りやすく熱弁をふるった。
中野弁護士は、冒頭でパリの清掃労働者ストで、誰も山の様なゴミを片付けなかったことが市民のスト支援であり、「公共」の尊重だと述べ、「清掃事業民間委託で営利追求がされると弱肉強食の市場経済に委ねられ、労働の買い叩きが進む」「公共を支えるのはデイーセント・ワークであるべきだが、それが危機に瀕している」と訴えた。
労働者の尊厳を掲げた支援共闘結成は、かつて下請清掃の労組づくりで掲げた「俺たちはゴミではない」とのスローガンのごとく感動的で分りやすい熱気にあふれていた。
水谷 研次(team rodojoho)
◎相場の3倍の寮費が「適正」? 名古屋入管がピンハネかばう判断
名古屋入管は15年12月9日、フィリピン人実習生から「寮費」名目でピンハネしていた会社について、「適正である」との不当な判断を出した。実習生らの相談を受け、愛知県労働組合総連合(愛労連)が5月に告発していた。
実習生たちが働いているのは城北電装(愛知県小牧市)。2013年11月から、北名古屋市にある会社所有の一軒家2階の2部屋に9人で生活、寮費は一人3万円だった。同市内の同程度のアパートは最高でも7万円程度で、光熱費を引いても3倍超ものボッタクリだ。
14年7月からは新寮に移り、18人となり寮費が4万円に値上げされた。10万円程度の手取りにとってたいへんな負担だ。
約30坪3階建ての3Fが居室で、3部屋に2段ベッドで18人が生活し、2Fが共用となっている。この秋からはさらに9人増え27人になった。12カ月では約1千300万円の収入となる。
近隣の高級マンションと比べても2倍以上の家賃となり、会社は5〜600円のぼろ儲けである。
技能実習生には寮が義務づけられており、寮費は「控除する額は実費を超えてはなりません」とされている。
JITCOガイドラインには「宿舎費の額は、近隣の同等程度のアパート等の相場を超えてはならない」とされている。
ところが法務省は「きれいな寮で大型テレビもあった」などというだけで、実費も近隣との比較も示さず不当なピンハネを容認してしまった。
前回の制度改正以後、最賃違反は縫製など一部を除き減っているが、「家賃」でのピンハネが増えている。
ブローカーによる不正も横行しており、広島では櫻花協同組合で逮捕者が出た。
政府は新法をつくって実習制度の拡大を図ろうとしているが、このような対応では米国人権報告書の「奴隷労働」の指摘を免れるものではない。
榑松 佐一(愛労連議長)
◎大阪と並ぶ鎌倉市の組合敵視 市職労、事務所防衛で市民と連帯
神奈川県鎌倉市で、松尾崇市長(42)と同市職員労働組合(芳賀秀友委員長)の問で深刻な労使紛争が起きている。
紛争のきっかけは、「西の大阪、東の鎌倉」(芳賀委員長)と言われるほどの市当局による露骨な労働組合攻撃だ。事態を重く見た市民や労組が15年12月13日、約250人集まり「鎌倉市政を市民と働く仲間に取り戻す会」を結成した。
鎌倉市の労組攻撃の発端は、14年9月の定例市議会。同議会には、職員給与の大幅な引き下げを内容とする給与条例改正案が提出された。
改正案には、労使合意した激変緩和措置が付則として盛り込まれていた。議会は「激変緩和措置は不要」として付則を削除して改正案を可決した。労使合意を市議会が完全に無視した形だ。
これがまかり通るようでは、労働者は誰と労働条件の交渉、合意をすれば良いのか。労組と合意した市長は議会が反対するのならば、責任を持って議会を説得するべきである。 それもなく、激変緩和措置はなくなった。その結果、賃金が一度に17.8%も低下した職員が出てしまった。労基法が懲戒処分でも禁じる10%以上の賃金引き下げが行われた。
労組は県労委に救済を申し立てている。
市当局はその後、市役所本庁舎敷地内にあった組合事務所の明け渡しを求めた。理由は事務所の入っている建物を解体して子供のための施設を作るためとしている。
しかし、敷地内での事務所移転先を求める組合に、市は敷地内での移転先を示さず、15年10月末での事務所の使用許可の取り消しを通告してきた。このため、労組は10月末以降、24時間体制での事務所保全を強いられている。
市や、労組を嫌悪する議員らは「不法占拠」「子どものための施設建設を組合が妨害している」と不当な組合攻撃を強めている。
言うまでもなく、組合事務所は団結の拠点である。組合が県労委に賃金問題での救済申し立てをしている最中の事務所追い立てに、県労委は敷地内に移転先を用意すべきとの勧告を出している。勧告をも無視して組合攻撃を続ける市の姿勢に市民も危機感を強めている。
集会に参加した市民は「労働者の権利を無視するような市が市民の権利を守るとは思えない。市民自治が守られるかとも地続きの問題だ」と話していた。
集会後は参加者が市内をデモ。労組と市民が連帯しての反撃が始まった。
東海林 智(team rodojoho)
◎「日の丸・君が代」強制処分 再雇用拒否裁判控訴審も勝訴
15年12月10日、東京高裁で「日の丸・君が代」強制処分に関する再雇用拒否事件の判決が出された。一審に続いて私たち一審原告の全面勝訴であった。
この事件は、都教委による「日の丸・君が代」による懲戒処分を理由に退職後の再雇用を拒否された25人が09年に東京都を相手に損害賠償請求を提訴した事件である。
「総合的判断」による不採用という処分に対し、思想良心や教育の自由などの憲法判断も含めた争点を提起したが、一審判決は、都教委に裁量権の逸脱濫用を認め、憲法判断をするまでもなく原告勝訴を判示した。
訴訟の争点は、(1)再雇用前後の雇用関係に継続性・関連性があるか否か。都教委は新規採用と同等であり、都教委に最大限の裁量権があると主張した。
これに対して一審二審共に「関連性・継続性があるとしてこれを退けた。
(2)「期待権」について、都は「事実上のもので法的根拠はない」と主張した。
これに対して一審は「90%以上の合格率」であり、「期待権は法的に認められる」と判示した。二審はこれを更に踏み込み「公正な選考を受ける権利」であると説示した。
(3)懲戒処分と再雇用の不採用とでは、二重に不利益を与えることになると判示した。また、一連の最高裁判決に修正を加える判示もあった。世界観・歴史観に伴う懲戒処分であることから間接的制約であり、不採用とすることに「慎重であるべき」であると判示した。
このように都教委の主張をことごとく退けた。
東京都は、上告し、最高裁の闘いが始まることになる。
「高齢者雇用安定法」が改訂されたが、退職後の不採用による労働事件が相次いでいる。特に公務労働でのトラブルが多い。
私たちの事件を上告審で確定させ、今後退職後の同類の事件をなくしたいものである。
永井 栄俊(元都立高校教員・本訴訟原告)
◎日日刻刻 生活保護163万世帯に (11.26〜12.4)